しかし、平成10(1998)年までは物価はとりあえず上がり続けたから年金は下がらないものであるという誤解が浸透している。ちょっとでも年金下がろうもんなら、もう年金は崩壊に向かってるとかわけのわからん話題になる。
まあ、平成11年から13年までは物価が3年間で合わせて1.7%下がったにもかかわらずに、この時期は金融不況で大手金融機関や企業の倒産が相次いだ時期であり、年金受給者の生活に配慮して年金を引き下げずに年金額を据え置いたという悪しき事例はありますけどね。年金受給者からの反発で選挙に影響する事を恐れて下げずに翌年の年金額を据え置いたともいえる。本来はここは年金を引き下げなければならなかった。
平成14年、平成15年も合わせて物価が1.2%下がりましたがさすがに耐えきれずに原則通り1.2%年金の下落に初めて政府は踏み切った。本来はそういうふうに物価変動や賃金変動という経済変動の影響を受けて上がったり下がったりするのが年金であります。
● 「物価が下がれば年金も下がる」を理解しない世代が次世代を潰す(hirokiまぐまぐニュース参考記事)
年金は現役男子の平均賃金の約60%台を目指すという考えに昭和48年改正で変わって、同じ時に物価スライドと賃金スライド(物価や賃金に合わせる)が導入されました。つまり、「60%台の年金を確保する為に必要な現役世代の保険料徴収を求める」という考え方ですね。
昔はまず年金受給者の給付ありきで、そのために現役世代から負担してもらう保険料を考えるというやり方でした。先にいくらの年金を支払いたいという目標を決めて、それに必要な保険料を決めるというやり方ですね。
しかし、少子高齢化の進行が予想を超える速さで進む事により、支えられる側の年金受給者は増えて支える側の現役世代は減るという方向に傾き始めました。こうなると現役世代の負担は際限がないですよね。経済成長が右肩上がりだった昭和だったらそれで良かったんですが、バブル崩壊と共に経済が停滞した平成ではそれは難しくなりました。それこそ年金制度が維持できなくなります。まさに破綻やむなし!の状況になる。
昭和60年の年金大改正の時にこれからも止まらない少子高齢化で現役世代の保険料負担限度をあまりにも過大にしないために、20年かけて年金水準が大幅に引き下げられた。
年金額の引き下げという点においてはもうこの昭和60年改正の時に大胆に行われた。
※昭和60年の年金大改正の詳細はこの記事では省略
● 昭和60年年金大改正についてなど(2017年10月有料メルマガバックナンバー)
● 第二次世界大戦から蘇った年金と歩みなど(2018年8月有料メルマガバックナンバー)
さらに年金受給者の現役男子の平均賃金の60%の年金を目指すという方向から、まず現役世代が負担できる限度を決めて、その中で年金給付を行うというやり方に変更されたんです。
その保険料財源の中に収まるようにマクロ経済スライドというのを使って、年金額をのものを引き下げるのではなく価値を下げていくという方法を取っています。マクロ経済スライドについては過去記事で何度も話してきたのでそれを参照ください^^;これは平成16年改正で導入されました。家計でいえば毎月入ってくる給料の中で支出をやりくりするという事です。
続きは6月19日20時の有料メルマガで配信します。
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