6月20日、中国の習近平国家主席が指導者になって初めて北朝鮮を公式訪問しました。訪問を前に習主席が朝鮮労働党機関紙『労働新聞』に「親善・協力関係を発展させる」と異例の寄稿をするなど、訪問前の下準備も抜け目なく行なっていたようです。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で、北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんは、金正恩にとっては中国の後ろ盾を誇示することで、米朝会談後の国内の不安を払拭したい思惑があると分析。北朝鮮国内の不満要因である食糧問題に関しても言及しています。
習近平が訪朝、中朝の思惑は?
今日6月20日に中国の習近平国家主席が北朝鮮を訪問する。習近平は19日付の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』に寄稿し、朝鮮半島問題の対話による政治的解決や金正恩委員長の経済集中路線を支持し、地域の平和や安定のために「積極的に寄与する」と表明した。
習近平の寄稿は「異例」であるが、習近平は寄稿の中で、北朝鮮だけではなく米国を念頭に関係国と「意思疎通と調整を強化し」、朝鮮半島問題に関する対話と協議が進展するよう「共同」で取り組む意思を前面に打ち出した。
さらに、北朝鮮と「地域の恒久的な安定を実現するための遠大な計画を共に作成する用意がある」とも言及した。狡猾(こうかつ)な習近平はさらに、今年が中朝国交樹立70年に当たるとし「国際情勢がどう変わろうと、親善・協力関係を発展させるという中国の立場は変わり得ない」と強調することを忘れなかった。
果たして中朝関係は本当に「血で結ばれた友諠」なのか。北朝鮮はことあるごとに「日本は百年来の恩讐」であるが、中国は「千年来の恩讐」とも言っている。金日成の時代から北朝鮮は中国を「いざという時には中国は最大の敵になる」と言ってはばからないが、今は金正恩にとって最大の“後ろ盾”の支持を誇示して自らの路線を正当化し、2月の米朝会談の物別れで生じた国内の不安を払拭する思惑が見える。
金正恩は「経済発展に総力を集中する」と言っておきながら、現実には韓国から「米5万トン」の支援を受ける有様である。韓国内には北朝鮮の言う「食料不足」を疑う声もあるが、親北路線を取る文在寅政権は状況次第ではさらなる支援も検討しているという。北朝鮮の食糧不足についてはさらなる調査が必要である。
北朝鮮は1995年に日本から「米50万トン」の有償無償の支援を受けたが、有償分のコメ代金の支払いを利子の1回分を収めただけで、後はなしのつぶてである。
北朝鮮は「茶坊主」文在寅の弱みに付け込んで、さらなる食糧支援を求めるかもしれないが、日本人も北朝鮮による日本への債務返済問題についてもっと関心を持ってもらいたいものである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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