老後2千万問題を経た参院選で出るか?「明らめ」の一票の恐ろしさ

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金融庁が発表した「老後に2,000万円が必要」という報告書に批判が殺到。政府は、報告書を受理しないという異例の対応をしましたが、参院選の争点の一つとなるのは間違いありません。メルマガ『8人ばなし』の著者の山崎勝義さんは、この問題について、もともと不安があった老後を、具体的な数字によってイメージしやすくしたと分析。デモも起こさず冷静な国民の諦めが、明らかな目を開かせることもあると、参院選の動向に注目しています。

老後2000万円問題のこと

またまた年金問題である。今度の火種は「老後2000万円」という文言だった。もとよりこの国において老後の不安は常に燻っている火事場のような状態だから何かあればこの通り、忽ちの大炎上である。

しかしその割には実害がほとんどない。市中に暴動が起こる訳でもなく(それどころかデモすらない)、また消費が落ち込むということもない。

これほどに国民が冷静なのは、皆うすうす分かっているからである。「まあ無理だろうな」と。そもそも貰う側は増える一方、払う側は減る一方では成り立つ筈もない。しかもその変化はともに急激である。

大体「100年安心」などといった言い様が通用すると思っていること自体、国民をバカにしている。誤解を恐れずに敢えて言えば、20年、30年先こそが問題なのであって100年先などどうでもいい、というのが本音なのではないか。

そもそも人智において100年単位の制度設計など不可能である。その辺りのところは逆算してみるとよく分かる。今から100年前と言えば、1919年(大正八年)、第一次世界大戦後のパリ講和会議の年である。この時代の一体誰が今の日本の現状を想像し得たであろうか

先に国民をバカにしていると言ったが、その国民の方で「100年安心」などまやかしであると既に分かっているなら寧ろバカにされてやっていると言う方が正しいのかもしれない。いずれにしろ、これに関して日本人は随分気長である。

さて今回、問題がここまで大きくなった原因は具体的かつ分かり易い数値を伴っての試算公表であったためである。

「老後2000万円足りない」
「毎月5万円赤字」

こんなふうに聞いてしまえば、もともと不安だっただけに猶不安になるのも当然である。今の自分でリアルに想像してみても分かる。毎月5万円どころか5千円足りないだけでも将来の生活破綻は明らかである。

つまり、今回の試算公表で老後資金が足りないことが生々しく想像できるようになったのである。これは大きい。シミュレーションが可能となるからだ。

例えば、5万円節約するとか、5万円稼ぐとか、2万5千円節約して2万5千円稼ぐとか、といったふうにである。もっと有体に言えば、貧乏を我慢するか、仕事を我慢するか、その中間辺りで我慢するか、といった来たるべき選択肢に(少なくとも心の中では)備えることができるようになるということである。

正直あまり愉快な模擬思考とは言えない。だが現実を認識することで政治への過度の期待はなくなる。諦めが明らかな目を開かせることもあるのである。

それに期待が薄くなればなるほど政治への評価は実績重視ということになる。いくら将来についての巧言を並べられても「何年かけても結局あなたたちできなかったよね」とバッサリやってしまえば浮動することなく選挙権を行使できるのではないか。

まもなく参院選である。「明らめ」の一票の恐ろしさを是非とも見せつけたいものである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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