【書評】科学者が明言、「何月何日に富士山が噴火する」はウソ

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2040年までの間にほぼ間違いないく発生するという南海トラフ巨大地震ですが、それに加えて我が国に大きな被害をもたらすのが、研究者らが「火山学的には100%噴火する」とする富士山。トラフの揺れが噴火を誘発する恐れがあるとも言われていますが、この2つの災厄は我が国にどれほどの損害を与えるのでしょうか。無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが、これらの災害を扱った書籍をレビューしています。

偏屈BOOK案内:鎌田浩毅『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ』

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鎌田浩毅 著/講談社

2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、日本の観測史上最大規模のマグニチュード9.0で、世界的には歴代4位ともいえる超弩級の巨大地震だった。関東大震災を起こした関東大地震の約50倍、阪神淡路大震災を起こした兵庫県南部地震の約1,400倍にもなる。次に来るのは「南海トラフ巨大地震」である。

東海地方から近畿・四国にかけての今後の海溝型地震発生の可能性(2019年時点での今後30年以内の発生確率)は、東南海地震が70%南海地震が70~80%と予測されている。わかりやすくいうと、西暦2030年代には発生する2030年プラスマイナス5年に起きるという予測だが、いずれにせよ2040年までにはマグニチュード9クラスの大地震が、この海域で発生するのはほぼ間違いない。

それは東海地震・東南海地震・南海地震の三つが同時発生する超巨大地震、いわゆる「南海トラフ巨大地震」になる可能性がきわめて高い。「予測される被害の大きさは、『3.11』の比ではない。日本列島に住むすべての人々の生命と安全を脅かし、いまこのときも日本人の将来設計に影響を及ぼす甚大災害といっても過言ではないだろう」。しかも、活火山の噴火を誘発する恐れもある。

3.11以後、浅間山、草津白根山、箱根山、焼岳など20個ほどの火山の地下では地震が急増した。2014年9月に、御嶽山で60名以上の犠牲者を出す戦後最大の噴火が発生した。3.11以降の富士山にも変化が現れている。富士山は1707年の宝永噴火以来300年以上沈黙しているが、もはや富士山は「いずれは噴火するであろう火山」から「近い将来必ず噴火する火山」へと歩を進めているのだ。

富士山は日本で最も観測網が充実している活火山のひとつである。常時、地震計や傾斜計などの監視下にあるので、噴火が起こるときは、数週間~1か月ほど前から前兆となる地震や地殻変動が観測され、気象庁から各メディアやネットを通じて国民に伝えられることになっているが、大震災後に対応できるのか

南海トラフ巨大地震の想定される規模はM9.1、九州から関東までの広大な範囲に震度6以上の大揺れをもたらす。震度の最大値である震度7に達する地域は10県、151市町村に達する。犠牲者層総数は最大32万人全壊建物は239万棟津波で浸水する面積は約1000km3に及ぶ。産業や経済の中心地域が被災するから、東日本大震災よりも様々な数値が1桁大きくなる。経済的被害総額は220兆円超

人口の半分近い6,000万人が深刻な影響を受ける。この巨大地震と連動して富士山噴火が起こったら……。日本では約50の活火山に観測網を展開し、そこで得られたデータは気象庁により24時間監視されている。そうした観測結果をもとに、著者ら地球科学の研究者は「火山学的に富士山は100%噴火する」という。

しかし、最初の噴火予兆である低周波地震がいつ始まるかの予告は不可能である。噴火予知は地震予知に比べ、実用化に近い段階までは進歩してきたが「何月何日に噴火するか」に答えることはできない。著者は「何月何日に富士山が噴火する」といった風評がメディアにやネットに流れても、科学的根拠は全くないので信用するなと言う。いずれにしろ近未来は危険がいっぱい。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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