のび太には特技がある。銃の早撃ち、あやとり、昼寝の3つである。ここで改めてそれらを再評価してみる。銃の早撃ちには外部刺激に対して瞬間的に反応する能力、つまりは優れた反射神経が必要となる。因みに、のび太は西部開拓時代なら伝説的英雄クラスである。
あやとりには手先の器用さはもちろん、高度な技には創造力が必要である。プロあやとりの世界があれば、のび太は世界チャンピオンクラスである。「イチ、ニ、サン。グウー」と瞬時に寝られるということは、眠りに相応しいリラックスと集中を自在にコントロールできるということである。ここまで来るとどんな鍛練を以てしても到達できるレベルではない。
のび太はダメ人間どころではない。超人レベルの才能を3つも有しているのである。この能力だけでも恐るべき存在だが、そういったことを可能とする周辺潜在能力は計り知れない。ドラえもんは、のび太の潜在した能力を顕在化させるために未来からやって来たのである。それにはおもちゃの如き「楽しい道具」こそが必要であり、またそれだけで十分なのである。
思えばドラえもんは未来からやって来ている訳だから、のび太にとっての最適ルートを常に提示している筈である。その最適である筈のルートがおよそ最短とは程遠いような回り道ばかりというのが、この漫画のどうしようもない魅力なのかもしれない。そんなふうに考える時『ドラえもん』の面白さが何十層倍にも感じられるのは自分だけだろうか。
image by: small1 / Shutterstock.com
ページ: 1 2