NY在住日本人社長がスコットランド旅行で遭った数々の意地悪体験

 

ネス湖に行くには、まず鉄道でインヴァネス駅というところまで3時間、乗り換え入れて4時間を要します。思ったより遠いな。しかもウェイヴァリー・ブリッジ駅は最大のターミナル駅なので、当然イギリス全土に行けます。電車の数も多く、電光掲示板もわかりづらく、どのラインに乗ればいいのかよくわかりません。インフォメーションセンターも早朝すぎて、まだ開いてない。

なので勝手にホームに入り、鉄道員っぽい制服を着た人を捕まえて聞いみます。丁寧に説明してくれた年配の女性鉄道員の言葉が、でも、まったく聞き取れず。ついつい失礼と思いつつ、何度も聞いて、口元を凝視してしまう。

ゲール語も混じるスコティッシュは、アメリカ人でも通訳をつけるほどらしく、まぁあああああったく聞き取れません。アイリッシュでもここまでじゃなかった記憶です。

思い出すのは「Snatch」という映画のブラッドピット。映画史上最も好きなキャラクターの、イングリッシュでもアイリッシュでもない言葉を話す北アイルランドのジプシー役、ワンパンチミッキー。声の出し方からイントネーションからすべてが現地の人と同じで、スコットランドに来て、ブラッドピットが凄い役者だと今さら気付かされました。

ぜひ、お時間ある際に見てください。YouTube貼っときます。同じ話し方です。 ● 「Snatch “Caravan Talk” of Brad Pitt with subtitles」

17番のりばということだけをキャッチできたた僕は、とりあえず乗り場に行くことに。中に乗っている乗客に聞いてみます。「インヴァネスって駅に行きたいんだけど」。30前後のメガネをした人の良さそうな白人のお兄ちゃんが「えっと、実は、僕も同じ旅行者で…わかんないんだけど…スマフォで調べてみたら」「それが、ルーター持ってなくて、通じないんだよ」。そういうと彼は自分のスマフォで調べてくれました。

「多分、Perthって駅で乗り換えだから、そこまで一緒に行こうよ」そう親切に提案してくれた彼と、そこまでの1時間ほど、横に座って色々と話しました。白人だけれど、メキシコ生まれのメキシコ人だということ。初めてスコットランドを訪れたということ。なかなかスコティッシュは聞き取りづらくて同じように苦労している、ということ。そして、旅の目的が、SNSで知り合って、お付き合いするようになったスコットランド人の彼女のもとに遊びにきた、ということまで教えてくれました。照れるように話す彼に「メキシコとスコットランドの遠距離恋愛?結構、遠くない?それでよく続くね」と驚くと「なので、今回、思い切って訪れたんだよ」と彼。「え…?ちょっと待って、今まで会ったことは?」「ない。今日が初めて。だから、緊張してんだよ」

驚く僕に彼は立て続けに話します。「駅で待っていてくれるらしくて…こっちはソワソワしてたから、それまで一緒に話す相手が欲しいと思ってたんだ」と。「……さっき、“彼女”って言わなかったっけ?」「そうだよ、僕の彼女」。

一瞬、何を言っていいのかわからなくなっている僕に「言いたいことはわかる。まだ会ってもいない相手を彼女って言うのはおかしいよね。でも、僕たちは運命をお互い感じたんだよ。会う前から、お互いが運命の人だと感じたんだ、だから、僕はこの国まで来たんだよ」

まっすぐな目をして語る彼に、「…そう、それはよかった。グッドラック」と答えました。同じ乗り換え駅で同じ列車に乗り、彼が先に途中下車します。

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すごいなぁ…会ったこともない人に運命を感じて、メキシコからスコットランドまで来れるもんだろうか。若さのなせるワザなのだろうか。彼に「彼女によろしくね」とお礼を言って別れます。路面上の小さな駅、迎えに来ているはずの彼女はまだ来ていないみたいで、大きなバックパックを背負った彼は、キョロキョロ周囲を目で探していました。

列車は動き出します。窓ガラスから、その彼を見送りながら「絶対すっぽかすなよ」と知りもしないスコットランド人の女性につぶやきました。

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