清水寺を訪ねる前に知っておきたい、本堂が崖にせり出している訳

 

7.400年後の改修工事に向けて

しかしそうはいってもケヤキの柱にも寿命があります。現在舞台を支えているケヤキの柱は樹齢400年のものが用いられているそうです。ケヤキの角材の耐用年数は樹齢の倍ぐらいだと言われているので、今の舞台を支えるケヤキの柱の耐用年数は800年ということになります。再建されたのが400年前なので、400年後ぐらいに立て直すことが必要となります。しかし400年後に樹齢400年のケヤキの木が確実に手に入るとは限りません。そのため400年後の再建のために今から準備をしています。清水寺は山林の土地を買いケヤキの苗木を植樹しています。この気の遠くなるようなことを平然と日常の生活の中でやっているのが京都のすごいところでもあります。

古都・京都はただ古いものを守るだけの街ではありません。大切にしてきたものを未来永劫存続させるための努力を常にしているのです。現代に生きる京都人も遠い未来を見据えた取り組みを沢山しているのです。彼らは決して過去のものに執着するのではなく、それに価値を与えよりいいものにして後世に伝える努力を怠りません。常に都であり続け新しいものを内外に発信し続けてきた発信力はいつの世も時代の先端を走っていたことでしょう。そして、現代も京都は未来に進む力、物事を前に進める促進力は衰えることを知りません。これこそがかつて都だった京都の底力なのだと思います。

清水寺は2000年に33年に一度の御本尊の御開帳がありました。その時に後世に残せることをと考え、ケヤキの苗木を植えたそうです。当時植樹されたケヤキやヒノキの苗木は6,000本です。400年後に木材として使えるように育つのはそな中でほんの1割とのこと。現在樹齢20年ぐらいのひょろひょろとした木が京都府の北部の山に大切に育てられています。世界的にも有名な清水の舞台裏を支える人の想いや取り組みは1,000年前と変わっていないのです。舞台を支え続けている職人の緻密な仕事の数々、技術の結晶を知ることでまた違った景色が見えてくることでしょう。

8.清水の舞台が崖にせり出して造られた謎

清水寺は778年、まだ京都に都が移っていなかった頃に延鎮(えんちん)という僧が建てた小さなお堂が始まりです。その小さなお堂を後に大改修をしたのが坂上田村麻呂です。日本史上初めて征夷大将軍に任命された人物ですね。実は清水寺の敷地は彼の家の敷地だったとも伝わっています。

田村麻呂がある日、現在の清水寺の近くで鹿狩りをしている時に延鎮と出会います。延鎮は彼が鹿を殺める事を察し説法をしました。田村麻呂は延鎮の説法を聞きこの地にあった自宅を寄進してお寺の本堂にしたといいます。そして彼は本堂を大改修して現在のような形になっていったそうです。

では清水寺の舞台はなぜ、何の為に造られたのでしょうか?それは清水寺があの場所に建っていたということに由来します。

9.千手観音像と清水寺

清水寺の本尊は千手観音です。千手観音がもともといらっしゃる場所は補陀落(ふだらく)という場所です。補陀落はインドの南にある島でそこには八角形の険しい山がそびえ立っていると言われています。日本では、修験道のような険しい山岳で修行することで悟るという「山岳信仰」というものがありました。なので、険しい崖や山々などがインドの南にあるという補陀落と同一視されるようになったのです。千手観音を本尊とするお堂を建てるためには補陀落の地形に見立てたかのような場所が必要だったわけです。

崖のギリギリな地形の場所にお堂や本堂を建てるインドの補陀落にならって、清水寺も当時崖ギリギリに建立されたのです。やがて清水寺は本堂ではおさまりきらないほど参拝客が来る有名なお寺になりました。しかし、元々本堂が崖のギリギリに建っているため、増築する場所がありません。そこで、崖にせり出した舞台のように本堂を増築するという方法がとられたのです。これが「懸造り(かけづくり)」という特殊な建築様式で建てられた清水の舞台です。

懸造りは清水寺だけでなく、山岳信仰を持つお寺などに見ることが出来ます。京都だと狸谷不動尊や、峰定寺などでも、懸造りを見ることが出来ます。崖ギリギリに建ったお寺が増築などをする際にはこの懸造りが用いられるのです。

10.まとめ

清水寺は建てられた場所やその存在感など見た目の魅力もさることながら、沢山の物語があることがその魅力をより際立たせています

時代を超えて人々が清水寺を大切にしてきた想いがあります。それが建築そのものや舞台の設計に表れています。また、人間の寿命をはるかに超えた400年後の未来を見据えた取り組みも始まっています。

今回ご紹介した清水寺の物語の数々はその歴史のほんの極一部です。これだけのことを知っているだけでも清水寺を訪れた時に味わえる楽しみは増えると思います。

清水寺参道からは産寧坂、二年坂、ねねの道を歩いていくと高台寺、円山公園、八坂神社にも行くことが出来ます。知恩院や青蓮院も八坂神社のすぐとなりです。是非、周辺の観光名所と合わせて今一度清水寺に出かけてみませんか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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