清水寺を訪ねる前に知っておきたい、本堂が崖にせり出している訳

 

4.清水寺の狛犬が阿吽ではない件

清水寺の仁王門をくぐる前に狛犬の口を注意して見てみて下さい。仁王門前の狛犬は左右2匹とも口を開けて阿吽ではなく阿阿」になっています。一般的に狛犬は一方が口を開けた阿形(あぎょう)で、もう一方が口を閉じた吽形(うんぎょう)になっています。「阿」は万物の始まりを意味し、「吽(ん)」は万物の終わりを意味しています。

なぜ清水寺の狛犬は2匹共口を開けているのでしょうか?これはお釈迦様の教えを世に大声で知らしめる為なんだそうです。細かいところにも意味のある細工が施されているので色々と注目しながら見物するようにしましょう。

5.建築様式(釘一本使わず)

清水寺の建築に秘められた先人たちの想いを知ると訪れた時により感動します。

清水の舞台から見下ろす谷を錦雲渓(きんうんきょう)といいます。錦雲渓の下から清水の舞台を見上げると太くてたくましいケヤキの柱が整然とそびえ立ち、とても頑丈に建てられています。この舞台を支える柱や建築様式には奥深くて人間味のある魅力が込められています。先人の知恵と技術の素晴らしさに感動し、舞台から見る景色もガラリと変わることでしょう。我々子孫に対する深い思いやりの気持ちが伝わってきます。

清水の舞台の床に敷き詰められた木の板は総檜ひのき張りです。その舞台を支える柱は高さ13メートルある18本のケヤキの大木です。険しい崖の斜面に張り付くように柱を立て、沢山の貫(ぬき)と呼ばれる檜の木材を水平に貫通させて接合させています。この独特の工法は懸造りかけづくり)と呼ばれています。格子状に組まれた木材同士が互いに支え合うことで衝撃を分散し高度な耐久性を保つことが出来る特殊な建築様式です。今まで数百年にわたって参拝者が訪れたにも関わらず一度も崩れ落ちたことはありません。それどころか、幾度もの地震に見舞われてもびくともせず、ぐらついたり、それを理由に補修をしたりすることもないのです。

柱と貫の接合部分は継手(つぎて)と呼ばれる技法で組み合わされています。僅かにできたすき間にはけやきの木片で楔(くさび)が打ってあって、釘1本使うことなく強度を高め足場を固定しているのです。このように先人の考え抜かれた技術の結集が舞台を支えているのです。

6.水に強い仕掛け(大工さんの優しさ)

木は火と水に弱いものです。清水寺は1,000年以上の歴史の中で何度も火災にあいました(13)現在の建物は1633年に江戸幕府3代将軍・徳川家光による再建)。しかし水に対してだけは昔から鉄壁の守りを貫いてきました。舞台を支える木材が雨にさらされる部分を防ぐ努力が続けられてきたのです。

地面から舞台を支える懸造りの構造を見ると先人たちが考え抜いた雨除けの技術の結晶が見て取れます。舞台そのものは元々軒先方向に緩やかな傾斜が付けられています。舞台に降り注ぐ雨が自然と崖に流れ落ちるように設計されているのです。水はけを良くして水が舞台にたまらないように工夫されています。訪れたことがある方はその緩やかな傾斜に気付いたことがあるでしょう。舞台そのものはそれを支える頑丈なケヤキの柱の屋根の役割を果たしています。

柱に取り付けられた沢山の貫の1つ1つの上には小さなひさしが丁寧に取り付けられています。垂直に立つ柱に対して水平方向に突き刺さる木材の先が雨に濡れたままになり腐食しないようにと工夫されたものです。屋台骨を支える柱の真横に走る貫は強度を増すためものなのにそれが腐っては意味がありません。そのたびに修復を繰り返すのも大変なことです。簡単に取替えられる小さなひさしを付けることで大型修復をせずに舞台を支え続けているのです。1,000年以上に渡って大工さんがとても細やかで心のこもった工夫を施してきたことが、世界遺産・清水寺を支え続けているのです。手作業で1つ1つ取り付けられている沢山のひさしを見ると清水寺を大切に思ってきた大昔の大工さん達の気持ちが伝わってきます。

小さな腐食や虫食いなどで傷んだ柱はその部分だけ切り取って木材を継ぎ足す根継ぎという手法で手当てしています。このように清水寺に関わってきた先人たちはその時々の技術や智恵というタスキをつないで舞台を守ってきたのです。

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