そこで、私も静岡県の本部運営訓練の前日、危機管理部の会議の席で言ってみました。「明日の訓練は中止」。私から事前に耳打ちされていた危機管理監を除いて、幹部全員が凍り付いてしまい、重い沈黙が支配しました。「さあ、どうする」。
ややあって、最高幹部の一人が言いました。「既に準備している自衛隊などとの調整が大変です」。私は、「中止命令を災害だと思えば、対処しないわけにはいかないだろう」と答えました。知事が中止命令を出さなくても、ほかの理由で中止になる場合もあります。そのときと同じように対処すればよいのです。
中止命令が冗談だと明かしたあと、私は災害に置きかえて考えることの重要性を説明しました。さきほどの最高幹部が「人災ですね」と苦笑いしながら呟いていましたが、人災も災害です。対処できないでどうするのかという点が問われています。
これが自衛隊だったら、迷惑そうなニュアンスで「人災」などと言わず、「奇襲」と表現するところです。奇襲対処は本来の任務ですから、不意打ちに堪えられなければ存在意義を問われます。
さあ、これから静岡県の訓練の中身がどのように変化していくのか、嫌がられながら、意地悪く見守っていきたいと思います。(小川和久)
image by: Rikujojieitai Boueisho [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
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