憧れのネス湖でNY在住日本人社長が出会ったモンスターは「人間」

 

もう限界だと思い、もう一度だけ、ホテルの2階の受付に行く。例のおばさん、またこいつか、の顔。正面に座り「おねがいだから、聞いて」と声のトーンを下げる。「昼までにインヴァネスに行かないと、列車に乗れない…」。話の途中で「だから、専用電話を鳴らし続けなさいよ」と遮る彼女をさらに、遮る。

「ごめん。失礼なことを言うね。この国に来て、まだ誰にも助けてもらっていない」もうヤケになってる。余計、相手を怒らせる可能性の方が高い。「あなたの国だ。できたら、この国で最初に僕を助ける人になってくれないかな」あまりに失礼なセリフだと自覚している。でも言わずにはいられない。彼女はだまったまま、僕から目を逸らさない。そのまま僕も目をそらさない。

何秒くらい経ったろう。彼女は「………いいわ」とひとこと言い、目の前の受話器をとり「1台お願い」と言って電話を切りました。その間たった15秒ほど。この15秒をあれだけ頼んだのにしてくれなかったのか、と言いかけたけど、「本当にありがとう」とお礼を言って、1階のフロントに戻りました。15分くらいで来るから、と彼女は僕の背中に教えてくれました。やっとだなと、思いホッとしたところ、40分経ってもタクシーは来ませんでした。

もうどうにでもなれと座り込んでうなだれているところ、30代くらいの白人のカップルが話しかけてきました。どうした?と。シカゴから観光でさっき到着したアメリカ人カップルでした。事情を話すと、彼らはたった今、レンタカーでこの村に到着したばかりなのに、そのレンタカーで駅まで送ってくれると言います。

ありがとおおおおおお」と抱きしめたところで、タクシーが到着。このままタクシー無視して、シカゴのふたりの車に乗りたかったけど、さすがに、それはマズイかなと思い直し、シカゴの彼らにはお礼を言って別れました。15分で来ると言って1時間かかったタクシーに乗ることに。

駅までの道中、タクシーの運転手に「丸1日、湖眺めていたけど、モンスター見れなかったよ」というと、「オレはこの村で生まれて40年暮らしてるけど、1回も見たことないよ」とサラっと返されました。観光客にそれ言っちゃダメだよねぇ…。

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(次回に続く)

image by: NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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