最初から仕事で手を抜こうと考える人はあまりいないでしょうが、慣れてくるとついつい誘惑に負けてしまうこともないとはいえません。無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原誠さんは今回の記事中、癖になりがちな「手抜きの怖さ」について、違法ドラッグの習慣性にたとえてわかりやすく解説しています。
手抜きと戦う勇気
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
音楽が好きな、ある若い男性は、仕事が終わると、音楽をかけて踊るクラブに通うのが日課でした。そのクラブである男性と知り合い、仲良くなりました。ある日、その男性から、違法ドラッグをやってみないか、と誘われました。若い男性は激しく拒絶しました。違法なことはまっぴらごめんでした。
しばらくして、若い男性は、仕事で大きなミスをして上司からひどく叱られ、落ち込んでいました。クラブに行っても踊る気になれず、酒ばかり飲んでいました。すると、先日知り合いになった男性が来て、とても気分が良くなるから、違法ドラッグをやってみないか、と誘われました。
若い男性は、ひどく酔っていたこともあり、「この気分が晴れるなら、一度だけだ。もう二度とやらない」と自分で誓った上で、違法ドラッグをやってみました。すると、とても良い気分になり、その日は踊り狂いました。
しばらくして、若い男は、交際中の彼女と喧嘩をして、嫌な気分になりました。クラブに行くと、違法ドラッグの男性がいたので、「またやりたい」と言い、違法ドラッグをやって、気分が良くなりました。
違法ドラッグをやると快感を感じ、かつ、警察に見つかることもなさそうなので、あまり悪いことだと思わなくなっていきました。その後、男性は、嫌なことがあると、違法ドラッグに依存するようになっていき、最後には逮捕されました。
さて、私たちは、仕事をしていて、100の品質を目指している時、80くらいのところで、「もう疲れた。このくらいでいいんじゃないか」と手抜きしそうになることがあります。はじめのうちは、「そんなことではダメだ」と自分を奮い立たせて100の品質まで仕上げるよう頑張ります。しかし、ある時、「今回だけだ。こんなに疲れているんだから、妥協しよう。次回からはまた100を目指そう」と一度手抜きをします。
すると、何が起こるか。
手抜きして楽をした快感を覚え、手抜きしても許されたという経験があると、次の時にも、「前回も80で大丈夫だったのだから、今回も大丈夫だろう。100はむしろやり過ぎなのではないか」などと正当化しはじめます。そして、その人の品質は、常時80になっていってしまうのです。そして、その人の仕事に関する評価はどんどんと落ちていきます。
仕事における品質の手抜きは、違法ドラッグのように、私たちの精神をむしばんでいくのです。
忙しく仕事をしている時に、あと一歩のところは、とても苦しいものですが、その時に怠けたい気持ちが出てきたら、それは違法ドラッグだと思って、断固拒絶していきたいものです。
「百里を行く者は九十を半(なか)ばとす」(戦国策)
今日は、ここまで。
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