避けられぬ吉野家「牛丼並盛」の競争力低下
このように吉野家では客単価が大きく上昇している。牛丼の新サイズとライザップ牛サラダを売り出したほか、5月からサイドメニューを値上げし、8月に高単価のすきやき重を販売した結果、3~8月の客単価は前年同期比4.2%増と大きく伸ばすことに成功した。客数も2.6%増と好調だった。
新たな商品を投入したことで客単価を伸ばすことに成功したが、それに加えて新たな顧客層を掘り起こせたことも見逃せない。
超特盛は食べ盛りの若年男性層、小盛は女性やシニア層の取り込みに成功した。ライザップ牛サラダは女性や健康志向の男性に人気を博した。一方、すきやき重は日ごろから吉野家を利用している客から支持され、リピート頻度の向上につながったという。
子どもの取り込みにも力を入れた。4月27日~5月6日に小学生以下の子ども向けに牛丼や定食、カレーなど全38種類が190円引きとなるキャンペーンを展開。7月20日~9月1日には同じく小学生以下の子ども向けに牛丼並盛が半額、それ以外のサイズの牛丼や定食、カレーなど全50種類が190円引きとなるキャンペーンを実施した。吉野家は18年の夏休みから子ども向けの割引を展開しているが、好評だったことから今年は規模を拡大して実施した。こうして子どものほか、同行する家族の需要の取り込みを図っている。
こうしたヒット商品や新たな顧客層の取り込みで吉野家の業績は好調だ。だが、今後の行方は予断を許さない。というのも、10月の消費増税後に失速する可能性があるためだ。
競合の「すき家」と「松屋」は消費増税に伴う軽減税率の導入で主力の「牛丼」や「牛めし」の並盛の税込み価格を維持し、実質的に値下げするという。
一方、吉野家は本体価格を据え置き、持ち帰りと店内の税込み価格を別にする方針だ。軽減税率では持ち帰りと店内飲食の税率がそれぞれ8%、10%になる。吉野家は店内飲食の場合だけ値上げとなり、牛丼並盛の税込み価格は7円高い387円となる。
すき家は牛丼並盛の税込み価格を350円に据え置くため、店内飲食の場合の吉野家牛丼並盛との価格差は30円から37円に拡大する。松屋の牛めし並盛(320円)と吉野家牛丼並盛との差は60円から67円に、首都圏で販売する「プレミアム牛めし並盛」(380円)は同額から7円差に拡大する。
たかが7円、されど7円、どのように転ぶかはわからないが、吉野家は消費増税時の値上げにより価格の高さが敬遠されて顧客離れが起きないとも限らない。
いずれにせよ、吉野家の牛丼並盛の競争力低下が避けられないので、好調な業績を維持するには、ライザップ牛サラダやすきやき重に続くヒット商品を生み出すことが欠かせない。吉野家は商品開発力が改めて問われそうだ。
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