香港では林鄭月娥行政長官がようやく「逃亡犯条例」の改正案を撤回しましたが、これで中国の香港への介入が阻止されたわけではありません。中国共産党は、今後もさまざまな手を使って香港を強く統制しようとしてくるでしょう。
香港の「一国両制」については、北京中南海の政争とも連動しています。胡耀邦から胡錦濤、李克強と続く団派(中国共産主義青年団)と、これに対抗する習近平派とでは香港政策は正反対であり、香港の行政長官もその狭間でなかなか決められず、民間の反抗勢力と折り合わないために長期化している側面もあります。
そして来年は台湾の総統選挙です。中国はフェイクニュースをさかんに流して、蔡英文の再選を阻止しようとしています。
中国では「五毛党」という、政府に雇われてネット上で世論操作を行うアルバイトがあります。政府の政策について「いいね」を押したり、反政府的な意見を批判するたびに「五毛」(5セント)もらえるというものです。
五毛党のほとんどは、中国の役人が担っていると言われていますが、そう考えれば、わざわざ日本で金を払った絵馬に香港や台湾の悪口を書くというのも、一般中国人の所業なのか、疑いたくなります。
それはともかく、中国がフェイクニュースで民主主義陣営を撹乱しようとしていることは確かです。そうしたウソに惑わされず、自由陣営が連携して共産党独裁の中国に対抗していく必要があります。リベラルな文在寅政権の韓国は中国側に行ってしまいそうですし、韓国と日米が対立しつつあるのも、韓国が西側陣営から離脱する可能性が高まっていることが背景にあるわけです。
中国が、香港人のみならず人類が求める「自由獲得」と逆行する動きを加速させているのは、魅力あるソフトパワーの欠如からくるものです。
かつてローマ文明隆盛の時代には、ローマ帝国に支配されたギリシャ人すら、輝かしい文明をもつローマ市民となったことを誇りに思いました。しかし、現在の中国は真逆です。
明治神宮で中国人たちが書いた、香港人・台湾人を貶め、バカのひとつ覚えのように「中国はひとつ」と記された絵馬は、そのソフトパワーのなさを象徴しているわけです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年9月10日号の一部抜粋です。