私は、もし日本がここから製造業で挽回するとしたら、ロボット工場しかないと思います。産業用ロボットに関しては、まだ日本が優位を誇っているので、それを活用して、単なるハードウェアだけではなく、ハードウェアやセンサーをコントロールするソフトウェア、生産管理・品質管理・在庫管理などを行うソフトウェアをSaaS(Software as a Service)として提供するのが良いと思います。
それも、日本国内に工場を建てることにはこだわらず、顧客のニーズにマッチした場所(地震が少ない、電力が安い、税金が安い、流通に適している、部品の調達がしやすいなど)に無人工場を建て、かつ、運用もしてあげる、というFactory as a Serviceビジネスが良いと思います。
それをすれば、人件費が中国に比べて高い、地震が多いなどのデメリットを克服して、再び製造業で日本が活躍できる時代が来ても不思議はないと思います。
特にAppleなどの米国のハードウェア企業には、トランプ政権からの「中国ではなく、米国国内で生産しろ」という強い政治的圧力がかかっている上に、AppleだってFoxconn一社にばかり頼っていられないので、日本のメーカーがAppleに対して「日本のロボット技術で、米国に建てた無人工場でiPhoneを生産する」という提案をすれば、地元との交渉(土地の安い借り上げ、税金の控除など)はAppleがしてくれるだろうし、工場を建てる資金の提供も(社債という形で)してくれる可能性が大きいと思います。
この計画の唯一の問題点は、「無人工場では雇用が増えない」点にありますが、そこは「雇用が増える」実際のメリットよりも、「中国に任せていたiPhoneの生産を米国国内ですることになった」という見かけ上のメリットを重視して人気取りに利用できることをトランプ政権に上手に気付かせてあげれば、何とかなると思います(後から、地方自治体には怒られるとは思いますが)。
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※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年9月10日号の一部抜粋です。