小泉進次郎氏の環境大臣への抜擢でサプライズを演出した安倍政権ですが、その遥か上を行く衝撃を世間に与えた、元SPEED今井絵理子参院議員の内閣府政務官への大抜擢。今井議員といえば元神戸市議との「道ならぬ恋」が記憶に新しいところですが、国会議員として半人前と言わざるを得ない彼女が政府の一員となった裏側には、どんな事情が潜んでいるのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、今井氏のスピード出世の背景を徹底的に探っています。
今井絵理子を政務官に推した山東昭子の危険な賭け
かねてより、派閥のポスト配分で大臣とともに省庁に送り込まれる副大臣や政務官は、官僚からは「盲腸」と揶揄されてきたものだ。つまり、いてもいなくても、どうってことない存在というわけだ。
しかしそれは、官僚から見ての話で、当の国会議員にとっては、出世の足掛かりであるには違いない。しかも党内でくすぶっているより省庁に出て、多少なりとも官僚に顔が利くほうがなにかと有利に決まっている。
「センセイ、センセイ」とかしずかれ、いい気になるのはいいが、人材派遣会社とつるんで外国人の在留資格証明書発行の口利き料を稼ごうとしたセコイ政務官がついこのあいだ世間を騒がせたばかりである。それなりの見識、人格は備えていないと、政務官の値打ちは下がる一方だ。
そこで問題は、今回の内閣改造で、今井絵理子参院議員が内閣府政務官として政府の一員になったことを、どう考えるかである。少なくともネット上の評判は芳しくない。もちろん、例の道ならぬ恋。新幹線で不倫相手と手をつないでスヤスヤ…あの写真の衝撃度。安倍官邸もそのあたりは考慮したはずなのだ。
それでもなお、彼女を抜擢したのは、なぜなのか。そもそもいまだ政治の勉強中の身である。平成29年2月からこれまでに国会で14回、質問に立っており、前の職業のおかげか場慣れしていて言葉も明瞭ではあるが、いかんせん、生徒が先生に質問するような内容で、鋭い指摘をしたとか、立法に一役買ったとかいう実績はゼロに等しい。
実績や論功でないとしたら、派閥力学か有力議員の推薦かということになる。今井氏を国会に引っ張り込んだあの人、山東昭子参院議長がバックについていることが何よりの力になっているのは確かだろう。議長になるまでは麻生派の会長代行をつとめており、政務官に押し込むくらいはたやすいことではないか。
今夏の参院選では、今井議員が麻生派の候補の応援演説に駆け回り、人寄せパンダの役割を十分にこなしていたのだから、麻生氏だってよろこんで推薦するだろう。
山東昭子、今井絵理子。かたや女優として昭和のテレビ、映画で活躍し、かたや平成のダンス&ボーカルグループ「SPEED」のメンバーとして一世を風靡した。二人が出会ったのは10年ほど前のことだ。
聴覚障害者教育福祉協会の会長をつとめる山東氏は、長男(当時5歳)の感音性難聴を告白し「ベストマザー賞」を受賞した今井氏と知り合い、協会のイベントで講演してもらうなど交流を続けた。今井氏のスピーチ力を見込んだ山東氏は、政治家に転身するよう口説いた。いずれ自分の後継者にという思いもあっただろう。しっかりした後継者がいれば、政界への影響力を、いつまでも保ち続けることができるのだ。
2016年2月9日、自民党公認で参院比例区に出馬する記者会見を開いたさい、今井氏は「山東先生からのお誘いで決意した。先生のお人柄、思いに共感しました。障害者に目を向けてほしい。お母さんの声聞いて自分なりの政策をつくりたい」と語った。
山東氏もこう言った。「7年前、今井さんに聴覚障害者の会に出てもらった。その時から下心はあったが、今回、私の後を継いで仕事をとお願いしたんです」
今井氏は手話を交えテンポよくしゃべる選挙演説の巧みさもあって首尾よく当選し、山東氏の思い通りにコトは運んでいるように見えた。しかし、やがて今井氏は「再婚して子供が欲しい」と山東氏に打ち明けるなど、女性としての願望をのぞかせるようになっていた。勘の鋭い山東氏は、相手の男性が誰かも、うすうすわかっていたかもしれない。