「危機管理としての提起」が「電気の問題」に矮小化された顛末記

 

私は静岡県で同じ被害が出たとき、どれだけ早く対応できるかを危機管理の面から模索しており、優先順位からして電力の復旧を最優先すべきだと思い、「電柱を立てるより落ちた電線を絶縁して通電を優先せよ」とツイートしたのです。

これは、危機管理対策を打ち出すための会議で、電力、電話、水など重要インフラの関係者を集め、「例えば、こんなことはできないだろうか」と問題提起するのと同じなのです。

会議の場では、「それは技術的に無理」といった説明があるにしても、罵声が飛んでくることはありませんし、私が危機管理専門家として問題提起したことについて「無知」という話にもなりません。それがTwitterの場合は、色んな人が片言隻句に噛みついてきます。

電気工事関係者を名乗っていても、発言内容を見ればピンからキリまでごちゃ混ぜになっており、キリの人が少なくないこともわかりました。そんな罵声を読んで嬉しくなるほど倒錯してはいないつもりですが、人の世の縮図を見せられているようで、複雑ではあります。

それでも、建設的な方向でツイートしてくれたり、危機管理に関する私の考えを理解してくれたりする人も少なくありませんでした。励みになります。

いま、阪神淡路大震災の直後を思い出しています。市街地火災に対するヘリコプターによる空中消火を提案した私は、消防当局と消防関係者から一斉攻撃を受け、頭から否定されました。多くのマスコミも、当局の見解を根拠として私の提案を否定しました。しかし、当時の消防当局はヘリの運用に無知で、米国の事例についても情報を持っていなかったのです。

その後、私の検証作業によって消防当局の主張は完全に覆り、空中消火はごく普通のこととして行われるようになりましたし、消防当局で私を支援してくれた人たちの推薦もあって、総務省消防庁の消防審議会委員(足かけ10年の年限のあとは専門委員)として危機管理に取り組んでいます

ヒートテックを生み出したユニクロの製品開発ではありませんが、「こんなものがあったらいいな」「こういうものができないのかな」から始めることは、外交、安全保障、危機管理の分野でも同じなのです。そういう口火を切るにあたっては、素人も玄人もないのです。(小川和久)

image by: wothan / Shutterstock.com

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 「危機管理としての提起」が「電気の問題」に矮小化された顛末記
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け