万年赤字の「USJ」を立て直した男が、丸亀製麺を復活できた理由

 

同じ手法で、USJのようなテーマパーク、「丸亀製麺」のような飲食チェーンばかりでなく、直近には農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)が銘柄を厳選した個人投資家向け投資ファンド「農林中金〈パートナーズ〉長期厳選投資 おおぶね」(「農林中金〈パートナーズ〉米国株式長期厳選ファンド」より森岡氏の提案により21日付けで改名)のマーケティングまでも手掛けている。

日本には長期にわたって株式や投資ファンドを保有し、資産を形成する考え方が根付かないと言われてきたが、世界最大級の機関投資家で、海外企業の情報収集にも長けた農林中金グループが提案する、構造的に強靭な企業の株式を保有し続けるファンドを、「おおぶねと親しみやすくネーミングを変えることで、現状を変えようとチャレンジしている。NVICが本当に売っているのは、老後を豊かに暮らせる「安心感」ということになる。

また、森岡氏の考えでは、USJが本当に売っているものは「興奮」。ディズニーランドが売る「幸せとは対峙する。その考えに基づいて、USJではジェットコースターを逆向きに走らせ、ゾンビが徘徊するハローウィンナイトを演出して大行列を生み出し、日本にハローウインを定着させた。さらには、2014年に細部にまで「ハリー・ポッター」の世界観の表現にこだわった「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」をオープンし、関西ローカルであったUSJは日本を代表するテーマパークとなり、インバウンドでも人気のスポットとなった。

USJのさらなる発展には、2つ目、3つ目の施設をつくる必要があると森岡氏は考えて沖縄での新テーマパーク建設を計画していたが、米国ユニバーサル・スタジオの経営者が代わり、中国の北京に最大級のテーマパークをつくる方針を推進するにあたり、却下された。刀では、オリオンビール、リウボウなど地元企業を含む5社で、沖縄にテーマパークをつくる準備会社ジャパンエンターテイメントを昨年8月に立ち上げUSJでは果たせなかった夢に再挑戦している。

そして、「丸亀製麺が本当に売っているものは手づくりによる感動だと森岡氏は指摘する。なので、その手づくりの感動を消費者に伝えるために、CMのタッチを年初から変え、6月にはさらに深耕して打ち立てであるからこそ体験できるもちもちの食感を「丸亀食感と名付けて宣伝しているわけだ。

さて、順調にV字回復を遂げている「丸亀製麺」であるが、どのような課題があるだろうか。1つはこの10月からの消費増税で軽減税率を適用されない外食が、軽減税率が適用されるスーパーやコンビニのテイクアウト食品に比べても明らかに不利となる。粟田社長は「おそらく消費増税は今回の10%で止まることなく、12%、15%と将来的に上がるのではないか。そうなった時に、軽減税率で8%に固定されたところとどう戦っていくのか。非常に厳しい」と危機感を募らせる。森岡氏にマーケティングを依頼したのも、今後も続いていくであろう消費増税をいかに乗り切るか、視野に入れてのものだ。

消費増税前にトリドールは組織を強固にする新たな取り組みを行っている。9月1日には、本社を神戸市内から渋谷再開発の一角を担う、南平台の「渋谷ソラスタ」19~20階に移転した。5年前から東京にオフィスを構え、これまで数ヶ所に分散していたが、これで名実ともに東京が本社になった。「世界を目指すにあたり渋谷の成長力、発展性に期待した」と、粟田社長は本社移転の理由を述べた。しかもそのオフィスは、各人の席が固定せず机や椅子の種類がさまざまにある自由な雰囲気

トリドールのスターバックス風な新本社

トリドールのスターバックス風な新本社

現代美術や知性・感性を刺激する本を展示し、昼寝用のスペースまでもが完備フレックスタイムを導入と、意欲的な働き方改革の試みである。外食企業のオフィスというよりも、先端的なIT企業のそれのように見える。

トリドール新本社、昼寝部屋

トリドール新本社、昼寝部屋

粟田社長は、スターバックスコーヒーでノート型パソコンを広げて仕事をしている人が増えているのを観察し、発想力が高まって戻って来たくなるようなオフィスをどうすれば構築できるのか思いを巡らせた。そこで、オランダで発祥したABW(アクティベート・ベースド・ワーキング)に基づいたオフィスのデザインでは日本の第一人者、ドラフト代表のインテリアデザイナー・山下泰樹氏に設計を依頼。時間と場所を自由に選べる、ABWのエッセンスを盛り込んだ、約350人が働くオフィスができ上がった。

トリドールのスターバックス風な新本社

トリドールのスターバックス風な新本社

社員食堂も、トリドールらしさを表現した、手づくり多国籍健康志向のビュッフェを開発。他の社食では出ないような民族料理をアレンジしたメニューも多数開発して、カフェ風の空間で提供している。

トリドール新本社、カフェ風な社員食堂

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トリドール新本社、インスタ映えも意識したランチメニュー

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