万年赤字の「USJ」を立て直した男が、丸亀製麺を復活できた理由

 

店舗展開では「丸亀製麺は駐車場を持った郊外店には実績があるが、都心部の店をどう増やしていくかを考えたい」と粟田社長は都心部強化を今後打ち出していく方針だ。実は、トリドールは「いぶきうどん」という都心部対応型の讃岐うどんの別業態を出店して、吉祥寺駅前などでたいへんな人気になっている。粟田社長によれば、「小型店のモデルでまだ実験段階にある」とのことだが、郊外は「丸亀製麺」、東京や大阪など大都会の都心部は「いぶきうどん」と、マーケットを分ける手もありそうだ。

「いぶきうどん」は打ち立てのうどんに加えて、讃岐うどんには欠かせないとされる瀬戸内海・伊吹島のいりこを使ったダシを前面に出している。「丸亀製麺」の汁ではいりこの味がしないため、トリドールは讃岐うどんを全くわかっていないのではないかとの批判もあるが、そんな無知ではない。ただし、粟田社長の現在の考えは、都心部もあくまで丸亀製麺を優先させたいとのこと。

森岡メソッドの運用法をマスターした暁には、とんかつ「豚屋とん一」、焼肉「肉のヤマキ商店」のような別業態にも同じマーケティングのやり方を拡大して、200~300店くらいのチェーンを複数展開したいと、粟田社長は胸躍らせている。

さらに、「丸亀製麺は香川県で創業したわけでもないのに、讃岐うどんをなめている」という昨今盛りあがっている批判に対してどう思うかを粟田社長に直撃した。すると、粟田社長は少し考えて「反論するよりも、実際の日々の営業で判断してもらうしかないと思っている」と回答。自分からはアピールしてはいないが、粟田社長は「丸亀市文化観光大使でもあり丸亀市との関係は良好である。

一方の森岡氏は、順調なマーケティングの成果を喜びつつも、「まだ、店によって製麺のレベルにバラつきがあるので、全体に引き上げていくのが大きな課題」と明言。「粉からつくったからといって製麺の技術が未熟ならば、おいしいうどんにならないだろう」という批判を受け、CMで打ち出す「丸亀食感」の真の実現を世に問うべく、製麺技術の改善を進める。

森岡氏は、「粟田社長には外食王になってもらいたい」と期待を寄せる。

粟田社長(左) 森岡氏(右)

粟田社長(左) 森岡氏(右)

USJが現在は森岡氏の助力なしに経営しているように、森岡メソッドの内製化ができるようになった地点がゴールとしている。

Photo by: 長浜淳之介

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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