日本全国どの居酒屋にもかならずあるメニューながら、マニアが存在するほどの「小皿」があります。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、そんな「ポテトサラダ」が美味しい居酒屋が繁盛する理由を記しています。
「ポテトサラダ」が美味しい居酒屋は、必ず繁盛する
「ポテトサラダ」。
洋食では、ビフカツ、エビフライ、ポークジンジャーという主役を力強く支える千切りキャベツの横で、静かに出番を待っている“準脇役”的な存在です。いてくれれば嬉しいのですが、いなくても、舞台にはさほど影響は出ないと言えます。
和食ではあまり姿を見せないのですが、セルフのご飯屋さんでは、一番安い小鉢として、手に取ってもらえるのを待っています。しかし、「しらすおろし」や「わかめ酢」のような定番小鉢には勝てないでいます。
スーパーの惣菜売り場では、そこそこの人気があり、多くの仲間たちと整列していますが、各家庭の食卓に並ぶ時は、「何か一品足りない」という場合の臨時雇いです。
どの場面においても、あまり光を浴びることのない、淋しい存在。それが「ポテトサラダ」です。
しかし、一カ所だけ、小さなスポットライトを当てている場所があります。おじさんの聖地・居酒屋さんです。「アヒージョ」が食べられるような洋風居酒屋でもなく、ワイングラスで乾杯するようなお洒落居酒屋でもありません。常連さんばかりが集まるような、街の片隅にある、カウンターが黒光りしている居酒屋さんです。
多店舗化せず、たった一軒を長く守り続けているお店。老舗の風格などありませんが、お客さまが世代をまたいで通っているお店。そんなお店に、スポットライトを浴びる「ポテトサラダ」があるのです。
もちろん、「おしながき」のトップにはきません。さりとて、単なる品揃えとして端っこに書かれているわけでもありません。属するジャンルがハッキリしないせいか、「おしながき」の後半、前の方にポツリと目立っていたりします。この場所が、居酒屋さんにおける、「ポテトサラダ」のポジションなのです。
「メインとしてお奨めするわけではありませんが、ちょっと眼を留めていただければ、決して期待を裏切りませんよ」という主張なのです。お客さまの眼にも留まりやすい位置です。お店としても、自信を持っているメニューなのです。
また、こういう居酒屋さんには、「ポテトサラダ」ファンが多いものです。いや、マニアと言っても良いでしょう。居酒屋さんの「ポテトサラダ」を食べ歩く人もいます。「ポテサラ酒場」という本が出版されていたり、「ポテトサラダ学会」という集まりもあります。それほど、居酒屋さんの「ポテトサラダ」は、静かに注目されているのです。
なぜ、居酒屋さんの「ポテトサラダ」なのでしょう。それはずばり、美味しいから。居酒屋さんの「ポテトサラダ」は、お店によって個性がまったく違います。具材も違えば、調味料も違います。お店それぞれに工夫があって、食べ歩きする人の気持ちはよくわかります。
惣菜として売られている「ポテトサラダ」は、世間からはやや軽く見られていますが、実は非常に難しい料理です。しっとりとしていて、ほくほく。具材の存在感を引き立てながらも、じゃがいもの旨さも消してはならないのです。マヨネーズをケチるとボソボソになりますが、多すぎると酸味がキツくなります。さじ加減が難しく、料理の腕が試されるような存在なのです。
だから、居酒屋さんではさまざまな工夫で、美味しく作っているのです。つまり、美味しい「ポテトサラダ」を作る居酒屋さんは、料理の腕も良いということになります。「ポテトサラダ」でそのお店のレベルがわかる、と言っても良いでしょう。
居酒屋さんは、どれだけ珍しいお酒を揃えていても、それだけでは繁盛しません。やはり、美味しいものがあってこそ、「酒と肴」を楽しむお店となれるのです。「ポテトサラダ」は、そんなお店を見つけ出すための指標となる料理なのです。
image by: Shutterstock.com