香港には介入せず、台湾を睨む習近平の中国。問われる日本の戦略

 

この『中国によるリーダーシップ』という概念に反対するアジア諸国は多いかと思いますが、今年に入って日本を友好国と公言し、激化する日韓問題においても、真意はわかりませんが、常に日本サイドについている気がします。

日本からの“返答”は特にありませんが、今後、「中国とどのように付き合っていくのか」、「そしてアメリカとどう付き合っていくのか」という日本外交の根幹ともいえる方針を急ぎ立てておく必要があるように思います。

韓国に対しては、すでに文政権は見放していますが、習近平国家主席の中国が抱く大アジア構想には欠かせない“パーツ”として、政府内の友人の表現を借りると、韓国に止めを刺さずに生かす働き掛けは行うようです。

北朝鮮に対しては、金体制の後ろ盾としての地位を固めることで、今後、朝鮮半島がどのようになろうとも、確実に中国の勢力下においています。 トランプ大統領のアメリカが、実質的に朝鮮半島に対する関心を失っていることもあり、これで朝鮮半島に対する中国の“影響力(支配力)”は確立される方向に進んでいます。そして、朝鮮半島の南北が統一される暁には、38度線は、対馬海峡まで下がってくることになるかもしれません。

ほかのアジア諸国については、一帯一路の背後に隠れた中国の思惑への解釈の違いで、中国に阿るカンボジアやラオスという親中国諸国と、フィリピンやベトナム、インドネシアという南シナ海問題を抱える反中国グループ、そしてモルジブなど、すでに中国経済圏に組み入れられた国々で、中国に対する感情は異なりますが、「アジアはこれまで長く欧米に軽んじられ、常に見下されてきた」という“認識”については、習近平国家主席の中国に共感している様子を、最近、よく耳にします。

アメリカとの貿易戦争で真っ向から対峙する中国。世界第2位の経済力を用いて、『一帯一路』政策の下、アジア、アフリカにつながる中国経済圏の帯を作ろうと邁進する中国。実際に使わることはないと思われるが、ひたすら軍備を拡張し、更新していくことで、軍事大国としての地位も確立しようとする中国。そして、One Chinaを足掛かりに、周辺国も“束ねた”共同勢力圏としてのOne Asia構想を今後実現するために邁進する中国。

その中国といかに付き合い、混乱を極め、すでに絶対軸が存在しない国際情勢の中でどのような役割を果たすのか、日本としても急ぎ国家的な戦略を準備しておく必要があると私は強く感じています。それは『米国か中国か』という二者択一ではなく、いかに日本独自の位置取りを決めて、国際情勢の中で存在を示すのか、私もしっかりと考えておきたいと思います。

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