香港には介入せず、台湾を睨む習近平の中国。問われる日本の戦略

 

しかし、香港への介入の代わりに台湾に対する態度は硬化させる見込みです。国慶節のスピーチでも明言されたように、習近平国家主席の中国は、そう遠くないうちに台湾を統一し、『一国二制度』によるOne Chinaを目論んでいます。スピーチの中では年限については触れませんでしたが、習近平国家主席周辺の情報によると、2020年までに、香港と同じく、一国二制度を固定させる動きに出るのではないかとの見解も出てきています。

もちろん台湾政府および“国民”は激しく反発し、その結果、対中強硬姿勢の与党・民主進歩党から再選を目指す蔡英文総統が、来年1月に行われる総統選挙に向けて優位を保つ(取り戻す)という事態になっています。今後、この総統選挙に向けて、北京政府がどのような工作を行ってくるかは、現時点では分かりませんが、来年1月、誰が台湾を率い、中国と対峙するのか、目が離せなくなってきました。

しかし、先日のソロモン諸島やサモアなどが相次いで台湾と断交し、中華人民共和国と国交樹立を行っている事実は、確実に台湾の外交力を削ごうという北京政府の策が見事に当たっている証拠とも取れますので、新しい総統の国のかじ取りは、かなり困難なことになるでしょう。

ちなみに、今回、軍事パレードで圧倒的な軍事力を誇示したのは、香港、ウイグル、そして台湾への軍事的な絶対優位を印象付けていますが、同時に、香港、ウイグル、台湾からの対中反発を強めていることも事実で、それぞれ国連や他の国際社会などを巧みに巻き込む努力をしていますが、中国政府にどこまでのインパクトを与えられるかは不明です。

ここまでの話だと、確実に習近平国家主席による集権体制は完成に向かっており、かつ中国が抱く世界的な覇権への飽くなき欲望が、批判を受けつつも着々と進んでいる様に見えますが、本当にそこまでネガティブな話なのでしょうか。先日、たまたまですが、習近平国家主席による演説を聞く機会があり、正直、「習近平体制そして中国は、もうNext Stepに進んだな」と感動にも似た印象を受けました。

アメリカのトランプ大統領が進めるAmerica Firstに代表される『自国第一主義』は、メキシコやブラジル、ハンガリー、チェコなど、じわじわと国際協調体制を蝕み、第1次世界大戦や第2次世界大戦前夜の世界のように、ブロック化する状態が進む中、今年に入り、習近平国家主席の演説は「中国のみの利益だけではなく、どうしても欧米に軽んじられてきたアジア全域のために中国がリーダーシップを発揮する。その覚悟にあたり、中国は、日本や韓国、北朝鮮、そしてアジアの周辺国と手を携えてアジアを一大勢力圏にするために全アジアのリーダーとして邁進する」との覚悟表明に近い内容だったように聞こえました。

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