止まらぬ客足減に有効な施策は?
ワタミは従業員に過酷な労働を強いるなどしてイメージが悪化した。「ブラック企業」と批判され、一時は営業赤字に陥るなど深刻な状況に陥った。ただ、“ワタミ”の名を冠する総合居酒屋の「和民」や「わたみん家」を、“ワタミ”の名を冠していない専門居酒屋の「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」へ転換を進めたことが奏功し、業績は底を打ちつつある。
ワタミの19年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比1.1%減の228億円、営業損益は8,400万円の黒字(前年同期は2億2,300万円の赤字)だった。減収ではあるが微減にとどまっているし、営業損益は黒字に転換している。最終損益は6,500万円の赤字(同3億800万円の赤字)だが、赤字幅は縮小した。
ワタミはいわゆる「ワタミ隠し」が奏功したかたちだが、これはイメージの良し悪しが業績を左右することを端的に示したといえるだろう。これは、廃れ気味の総合居酒屋から勢いがある「専門居酒屋」に転換したことも大きいが、それと同じくらい、“ワタミ”の名を冠していない居酒屋に転換したことが大きい。仮に「和民」の名前のまま専門居酒屋に転換したとしたら、名前から「ブラック企業の居酒屋」と思われてしまい、集客はままならなかっただろう。
このように大塚家具やワタミはイメージの悪化で業績が悪化したわけだが、くら寿司も業績悪化の構造は同じだ。
もっとも、くら寿司はイメージ悪化の度合いは大塚家具やワタミほどではない。「バイトテロ」は「骨肉の争い」や「ブラック企業」と比べてだいぶマシだろう。
とはいえ、くら寿司の全社業績は伸び悩みを見せており予断を許さない。19年10月期第3四半期(18年11月~19年7月)連結決算は、売上高が前年同期比2.6%増の1,005億円と伸び悩んだ。前年同期の18年10月期第3四半期の伸び率が7.6%だったことを考えると失速していることがわかる。既存店の不振が新規出店効果を削いだかたちだ。また、利益が大きく減っており、営業利益は25.9%減の38億円、純利益は30.3%減の26億円とそれぞれ大幅減となっている。
もちろん、くら寿司は手をこまぬいているわけではない。例えば、6月から炙ったウナギのすしを売り出したほか、7月から2種類の新しいハンバーガーを、9月からは新たに立ち上げたスイーツのブランドのパフェやタピオカドリンクを発売するなど集客策を施している。だが、抜本的な対策にはなっていないのが現状だ。客数減を食い止めることができていない。
悪化したイメージを改善するには時間が必要だ。とはいえ、それまで何もしなくていいわけでは当然なく、地道に集客策とイメージ向上策を実施していくほかない。粘り強く対策を施していく必要があるだろう。
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