2日間の野党合同ヒアリングを通じて印象的だったのは鈴木日本郵政副社長の強気な姿勢だ。あれだけ不正販売の実態が明らかになったにもかかわらず、「詐欺まがいだ」と迫る野党議員に対し、「今でも詐欺まがいとは思っていない」と反論した。とりわけ驚いたのはNHKの制作担当者について「まるで暴力団と一緒でしょ」と言い放ったことだ。
1日目のヒアリングが終わったあと、記者団の取材に応じたさい、「NHKは動画が不適切だと認めていないが」と問われてこう語っている。
「取材を受けてくれれば動画を消すなんて、そんなこと言っているやつの話が聞けるかって。まるで暴力団と一緒でしょ、それじゃ。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ。俺の言うことを聞けって。バカじゃねぇの」
よく言えるものだ。NHK公式ツイッターの動画を抗議して削らせ、続編の延期に追い込んだにもかかわらず、日本郵政の商法がいかにアンフェアであったかが他メディアの取材でも明らかになってきたのではないか。その流れを受けて今年7月、ようやく「クロ現+」の続編が日の目を見たのである。
郵政側に取材をしても「不正販売はしていない」とシラを切り通したために、「クロ現」スタッフはツイッターの動画で情報提供を求めていたのであろう。取材をきちんと受けてくれたら動画の必要もなくなるのだ。ディレクターの発言はそういう意図から出たのではないのだろうか。それをもって「暴力団」と非難するのはお門違いも甚だしい。
一方、情けなく、許せないのはNHK経営委員会と会長以下経営陣の姿勢だ。そこに報道の自由を守るというジャーナリズムの基本精神が存在するだろうか。63%の株式をいまだに政府が保有する日本郵政の問題を、国民の視聴料で成り立つ公共放送が深く掘り下げていくのは当然のことである。それを邪魔しようとするいかなる勢力に対しても毅然とした姿勢を示すべきである。
野党合同ヒアリングで、野党議員の一人が鈴木氏にこう質問した。「知る権利がおびやかされている。自らの経歴をカサにきて一連の抗議行動を主導したのではないか」。
鈴木氏は「番組に言われっぱなしでいいということではない。放送が全て正しいわけじゃない」と開き直って見せたが、まさにこれこそが、驕り高ぶりであろう。
NHK経営陣、日本郵政、どちらにも心得違いが横行し、腐敗臭が漂う。公私混同、お友達優遇、権力乱用の安倍政権のもと、さまざまな公的機関が堕落し、自浄能力を失っている。