わが国では古くから多様な食文化が育まれてきました。しかし昨今はファーストフード店の台頭などもあり、その豊かな「食」が失われつつあるのが現状です。今回の無料メルマガ『安曇野(あづみの)通信』では著者のUNCLE TELLさんが、ファーストフードのもたらす食の均一化に警鐘をならし、その対立概念であるスローフードの考え方を紹介しています。
ファーストフードとスローフード
今の世は相変わらずファーストフードの時代が続いている。特に若者などファーストフードがなければ一日も暮れないといったありさまではなかろうか。このファーストフード全盛に対して、スローフードなのである。
「なぜ信州のスローフード「おやき」が、全国区の味になったのか?」でも登場した長野県立短期大学教授だった三田コトさんが、インターネットなどで調べた結果によると、「そもそもスローフードという言葉は、美食の国、家族や友と食卓を囲むことを至上の悦びとする人々の国、イタリアで生まれた。1986年、ローマのファーストフードの最大手が第一号店を開いたのをきっかけに、誰かの口をついて出た言葉がスローフードだ。スローフード協会というNPOが正式に生まれ、パリのル・モンド紙に『スローフード宣言』を発表したのは、その3年後のことだった」という。このことは島村菜津という人の著書『スローフードな人生!』や雑誌記事などに掲載されているとか。
そして「スローフードを一口でいうならば、土地に固有の味、多様な味の世界を守ろうという運動である。具体的には、まず、郷土料理や質のよい小生産者を守る、子どもを含めた消費者の味の教育、そして放っておけば消えてなくなりそうな味を守る、この3つである。スローフード協会は、出版活動、味見の出来る見本市、美味しいものツアー、学校教育を通じて、盛んに生産者と消費者、農村と都市をつなぐ試みを続けている」という。私はこのことを以下のことなどを含めて、三田先生の講義で知ったわけである。
幼時からファーストフードの味を知り、成長し親になってもごく当然にファーストフード世代、むろん子どもにも躊躇なくファーストフードを与える。こんな循環がここ何十年繰り返されている。大量生産、大量販売による食のグローバル化で、世界中の食べ物や食べ方が均質化、簡便化が急速に進んでいる。というわけでファーストフード店は、アジアであれアフリカであれ、世界中のどこの地域へも進出してチェーン網を広げる。
ファーストフード、ついつい便利ではあるので手を出してしまうが、どんな肉や小麦粉を食べさせられているかわかったものじゃないと、感じている。
NHKで『スロフードでおいしく』再発見地域の食材という番組を放映していたことがある。そこでは、スローフードの定義として、絶滅の危機にある食材や伝統料理を守る、質の良い食材を提供する小規模農家を守る、次世代の子どもたちに食教育を推進する、の3つが上げられていたと三田先生。
食べる基本は、幼児期・学童期に形成される。子どもの時に日常何を食べたかは、一生の問題である。ファーストフード漬けの食生活には、必ずやツケが回って来る。成人病・生活習慣病が忍び寄っている。
食は農の産物。農は大地の恵み。自然環境破壊に繋がる「食」は違法とも三田先生は力説する。そしてまたファーストフード全盛が、日本農業の破壊にも繋がっていることは疑いもないとも。
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