ZOZOの栄光と失敗。カリスマ・前澤友作氏は何を見誤ったのか?

2019.10.24
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時代の追い風と持ち前のアイディアを武器に、ZOZOを時価総額1兆円の大企業に育て上げた前澤友作氏が、同社のヤフー(現・Zホールディングス)傘下入り、さらに自身の代表取締役社長の退任を発表してから一月あまり。時代の寵児とまで呼ばれた前澤氏は、なぜZOZOを「身売り」するまでに追い詰められてしまったのでしょうか。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが検証します。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

前澤友作氏が率いたZOZOの栄光と失敗

スター経営者として、月旅行計画や女優・剛力彩芽さんとの交際など、派手な話題に事欠かなかった前澤友作氏が、ZOZOのヤフー(現・Zホールディングス)傘下入り発表と共に、社長を辞任し、ZOZOの経営から退いた。創業者・前澤氏は、成功しないと言われてきた日本のアパレルのECビジネスを、その常識を打ち破って見事にブレイクさせた敏腕の起業家である。

しかし、ZOZOは、アパレル各社をECモール「ZOZOTOWN」に募って集客をはかるビジネスモデルであるにもかかわらず、顧客のサイズにぴったりと合った洋服を自ら製造販売するビジネスに進出。希望者に無料で、サイズを計測する「ZOZOSUIT」を配布し始めた。

ZOZO自身が製販一体化したユニクロ化するとなると、アパレル各社からは新参の競争者とみなされ不信感からZOZO離れを起こしてしまった。それが、ZOZOが買収され、前澤氏が退任にいたった主因である。なぜ、前澤氏ほどのカリスマ性の高い俊才が、ビジネスモデルと整合性が取れない悪手を打ってしまったのか。前澤氏が率いたZOZOの栄光と失敗を振り返り、検証してみたい。

7,367ものブランドを取り扱う(2019年10月22日現在)、日本最大のアパレル通販サイトZOZOTOWNの運営を主力とする、ZOZOの19年3月期の決算は、売上は大幅に伸びているものの、創業以来の減益となった。売上高は1,804億500万円(前年同期比20.3%増)に対し、営業利益256億5,400万円同21.5%減)、経常利益257億1,700万円21.4%減)だった。

ちなみに、18年3月期は、売上高984億3,200万円(同28.8%増)に対して、営業利益326億6,900万円(24.3%増)、経常利益327億4,000万円(同23.8%増)となっていた。前年はハイレベルの増収増益を達成し、日の出の勢いにある新進気鋭の企業と考えられていた。それがわずか1年後には、売上が2割も伸びているのに、利益が逆に2割も減少。収益の構造が明らかにバランスを崩し成長性に疑問を持たれている。

利益の減少で足を引っ張ったのは、新規の自社で展開し始めたPBプライベートブランド事業だ。19年3月期の決算説明会資料によれば、PB事業の商品取扱高が27億6,000万円に対して、ユーザーがサイズを測るために配布されたZOZOSUITの配布や、PB商品関連の広告に42億1,000万円が費やされている。また、売れなくて在庫が積み上がったPB評価損計上や、PB商品を拡販するために新たに人員を採用した人件費も膨らんだ。

PBブランド「ZOZO」のオーダーメイドによるスーツ、ドレスシャツ

PBブランド「ZOZO」のオーダーメイドによるスーツ、ドレスシャツ

もともとは、PBで最低でも135億円の売上を計画し2年後2,000億円を目指していたので、大きな誤算だった。ZOZOSUITの配布は当初600~1,000万枚を予定していたが、後日300万枚に下方修正されている。

その他にも、年間3,000円または月に500円(それぞれ税別)を払えば10%引になる「ARIGATO割引」がPB評価損計上と共に粗利益を押し下げ、配送運賃増や全般的な規模拡大による人件費増なども、減益の原因となったが、主因はPBがコストをかけたわりには思ったほど売れなかったことに尽きる。

なお、ARIGATO割引を行う「ZOZOARIGATOメンバーシップ」は、5月30日に終了している。昨年12月25日にスタートしたばかりだった。これは、割引額の一部または全額をZOZOが負担して、日本赤十字などへの寄付や購入先ショップへの還元を行うという、ZOZOにしてみればファッションを楽しみながら社会貢献できるユニークな取り組みだった。

コーディネートを投稿、検索できるゾゾの着こなしアプリ「WEAR」

コーディネートを投稿、検索できるゾゾの着こなしアプリ「WEAR」

ロックミュージシャンでもあり、世界平和の実現を究極の目標とする前澤氏らしい取り組みとも言えるかもしれない。しかし、出店するアパレルからは安売りの恒常化と受け取られブランドの価値を棄損すると反発が強かった。PBの伸び悩みだけではなく、ARIGATO割引も会員数が想定するほど増えなかったとして終了しており、失敗に終わっている。 

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