ZOZOの栄光と失敗。カリスマ・前澤友作氏は何を見誤ったのか?

 

ZOZOの停滞感を生んだ2つの大きな理由

このようなZOZOの迷走を反映して、株価も18年7月18日には4,875円と5,000円に迫る高値を付けていたにもかかわらず、12月28日には1,960円まで落ち込んだ。たった5ヶ月で、みるみる下がり4割になってしまった。PB不振で、慌ててARIGATO割引を始めたが、より事態を悪化させたのだ。なお、現状の株価は去る9月12日のヤフーのZOZO買収と、前澤氏から澤田宏太郎氏への社長交代に市場が好感を持ったのか、2,500円前後に戻している。一時期1兆円を超えた時価総額は、10月21日時点で7,860億円ほどである。

ZOZOが17年11月にPBブランドを立ち上げ、自らアパレルを製造して売ると発表した時、前澤氏の決断に拍手喝采を送った人は多かった。特に若いIT系の起業家、技術者、会社員などの前澤氏を崇めるシンパたちは、ユニクロを打ち破る新世代の代弁者が出現したと熱狂した。投資家たちもこの発表によって株買いに走り、8ヶ月後には上場来最高値に到達している。

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しかし、まぐまぐで人気メールマガシン『【最も早くオシャレになる方法】現役メンズバイヤーが伝える洋服の着こなし&コーディネート診断』を配信する、ファッションバイヤー・アドバイザー・ブロガーで当該分野のベストセラー作家でもあるMB氏は、ZOZOがPB事業を始めた頃から「ZOZOのようなプラットフォーマーがPBをやるべきではない」と警鐘を鳴らしていた。

19年3月に公開された、元ライブドア社長で実業家の堀江貴文氏が主催するYouTube番組「ホリエモンチャンネル」にゲストとして登場したMB氏は、「ZOZOTOWNは集客力のあるブランドが集まっていることが魅力。本来は、ブランドの集客力で戦っているのです。ところが、ブランドを目当てにモールに来た人に、より安いスタンダードなアイテムをPBで売るのはブランドの側から見れば面白くない話だ」と、ZOZO離れはPB展開の必然であると示唆。

また、「ZOZOTOWNの1品あたりの購入単価が、2年くらい前に比べると4割くらいも落ちている」と指摘。かつてのZOZOTOWNの1品あたりの顧客単価は7,000円くらいあったのに対して、今は3、400円くらいにまで急速に落ちている。楽天市場に出品している安売りブランドを、ZOZOがどんどん開拓しているのが、単価が落ちている要因である。

つまり、モールに出品しているブランドを目当てに来た顧客をPBに誘導する流れが見えたことにブランドが反発。しかも、楽天系の格安ブランドがランキングの上位を席捲するようになり、モールのファッション好きが集うイメージ価値が棄損され中価格帯から高級なブランドが出店する意義が薄れている。こうした2つの大きな理由が、ZOZOの停滞感を生んで、株価の低迷と減益につながっているとMB氏は分析するのだ。

しかし、コンビニでもPBを出している、プラットフォーマーがPBを出してなぜいけない、という反論もあるだろう。それに対してMB氏は、顧客はコンビニにとあるブランドの商品を買いに行っているというよりも、コンビニ自体を目的に足を運んでいる。一方で、ZOZOTOWNの場合はブランドの魅力のほうが集客源で、そういった状況でPBを始めるのは自己破壊行為だと考える。

もっとピンポイントで、TシャツならTシャツの1型に絞るのならありなのだが、スーツ、ドレスシャツ、チノパン、デニムパンツ等々ラインナップをいきなり広げたのも戦略的にまずかった。コンビニも最初から、今のようなPBをメインに売るような体制ではなかった。チェーン限定のビールやカップラーメンの1商品のヒットを何年か積み重ねて、実績をつくった後に、セブンプレミアムのようなPBブランドが確立した。前澤氏はPB商品の展開を急ぎ過ぎた感を拭えない。

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