さまざまなシーンで求められる「身元保証書」の提出ですが、意外なことに会社の入社時に求められることは多くないというのが現状のようです。しかし、「身元保証書は提出させたほうが良い」とするのは、現役社労士の飯田弘和さん。飯田さんは自身の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』で今回、その理由と身元保に期待できる「抑止力」について記しています。
御社では、入社時に身元保証書提出を義務付けていますか?
前回は「内定」についてお話ししました。内定者には、入社誓約書や身元保証書の提出を求める会社も多いと思います。そこで今回は、身元保証人の責任についてお話ししていきます。
入社時に身元保証書の提出を義務付けていない会社も結構あると思います。現に私も、転職を繰り返し色々な会社で働いてきましたが、今まで一度も身元保証書の提出を求められたことはありません。しかし、社労士という立場から言わせていただけば、やはり、身元保証書は提出させた方が良いと思います。
身元保証には、会社へ損害を与えた場合や会社の金品を横領した場合に、身元保証人にその損失を補填させる意味があります。しかし、それ以上に重要なのが、身元保証人を立てさせることで、その従業員が問題行動を起こすことへの抑止になるという事です。
従業員と身元保証人とは信頼関係でつながっています。その信頼関係を壊す行為、身元保証人を裏切る行為は、普通はなかなか行わないでしょう。ですから、入社時に身元保証人を立てさせ、身元保証書を提出させることは、会社にとってとても意義あることです。
ところで、身元保証人の責任については、無制限に責任を負わせることはできません。
まず保証期間ですが、最長でも5年です。特に期間を定めていない場合には、入社後3年間となります。保証する範囲は、当人の労務に関連したものに限られます。
また、保証期間中に、転勤等で身元保証人がその社員を監督できなくなった場合や、身元保証人に責任を問う可能性が発生した場合には、会社は遅滞なく、その旨を身元保証人に通知しなければなりません。このような通知を受けた身元保証人は、身元保証契約を将来に向かって解除し、その責任を免れることができます。
一般的には、会社が被った損失のすべてを身元保証人に負わせることはできません。
保証額については、損害額そのものとはせず、合理的な額を裁判で決定すべきものとされています。
このようなことからも、会社は身元保証人に会社の損失補填・損害補償を期待するよりも、従業員に問題行動を起こさせないための抑止力を期待していきましょう。
入社後しばらくの間は、その従業員の「人となり」がよく分かりません。そのような時に身元保証人を立てさせることは、会社にとってのリスクマネジメントであるともいえます。
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