スマート農業が世界的に注目される背景には、人口増加に伴う食糧需要の高まりによって、農作物をより効率的に大量生産することが求められていることがある。従来のように農業者の経験や勘に頼って生産を行うだけでは限界があり、最新の技術やデータ分析による効率的な生産体制の変革が期待されている。
一方、これまでは大規模で組織的な農業の担い手が利用するイメージの強かった農機だが、技術の進展で小型化や自動化が進んだ結果、小規模農家も導入しやすくなっているのが最近の特徴だ。スマート農業のすそ野は確実に広がっている。
日本政府も、生産性向上のために、機械メーカーやITベンチャーが農業者と連携してスマート農業に活用できる新たな技術を生産現場に積極的に導入することの意義を強調している。2019年6月に閣議決定された成長戦略では、2022年度まで様々な現場で導入できるスマート農業の技術を開発し、本格的な現場実装を進めるよう取り組みの強化を打ち出した。農業就業人口が1995年の414万人から2015年の210万人へと20年間で大幅に減り、1経営体当たりの平均経営耕地面積は1.6ヘクタールから2.5ヘクタールへと増えている。このため1人当たりの作業面積の限界を打破する技術革新は不可欠だ。
情報通信やデータ分析など、最近のIT(情報技術)やAI(人工知能)の恩恵を受けるのは他の産業と同様、農業も例外ではない。熟練農家のノウハウをハイテクによって次の世代に伝承することなど、技術を用いた日本農業の強化は今後ますます期待されそうだ。(本郷香奈)
image by: 本郷香奈
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