死角はあるか?コスパ最強の洋菓子店シャトレーゼ快進撃の秘密

2019.11.05
シャトレーゼ外観
 

ものづくりに活かされる「山梨の地の利」

シャトレーゼの商品が現在のような品質にまで高められた理由としては、94年に現在の主力工場である、山梨県北杜市の白州工場が稼働したことが大きい。同工場で井戸から汲み上げる水は軟水の中でも硬度が低くお菓子づくりに最適と同社では考えている。

白州工場

白州工場

南アルプス山麓にある白州は、サントリーのウイスキー醸造所やミネラルウォーター工場もある、名水で知られる地。シャトレーゼは山梨県内に3つの工場を有するが、他の2つの工場へも白州から水を運んで菓子を製造している。この山梨から全国、さらに海外の店舗に、商品の大部分が配送されている。国内ならば基本、商品は製造された翌日店頭に並ぶ

雑味のない軟水の良さがダイレクトに味に出るのが、アイスクリームをはじめとする氷菓だ。

白州に近い八ヶ岳は牛乳の産地であり、契約農場の新鮮な搾り立ての牛乳を使うことができる。牛乳は風味を損なわないように低温で殺菌する。このようにシャトレーゼは、ものづくりに山梨の地の利を活かしているのだ。

味の追求のために手間暇を惜しまない社風も、商品の品質の高さにつながっている。たとえば、一般に大量生産を行う多くの菓子工場では、卵は液卵を買ってきて使うが、シャトレーゼでは、その日に鶏が産んだ新鮮な卵を契約農場から仕入れて1個1個割卵機で殻を割り白身と黄身に分けている。白身にはものを固める機能があるが、液卵を使うとその機能が薄まっており、添加物の力を借りなくてはならなくなる。同社のやり方なら余計な添加物も不要だ。

水が重要なのは和菓子も同じで、とりわけあんこの製造では味に差が出る。あんこの素材である小豆は、各社が北海道などから国産の良質な小豆を仕入れているから、差は出ない。

シャトレーゼでは小豆の水洗いの段階から炊き上げる工程まで、白州の水を使い、風味豊かなあんこに仕上げている。

実は、シャトレーゼは創業時和菓子の専門店だった。1954年に甲府市内で、今川焼風「甘太郎」の店としてスタートしていたのだ。なので、あんことは縁が深く、その製造には並々ならぬ情熱を注いでいる。

ところが、今川焼は冬には売れるが、夏は売上が落ち込んでしまう。そこで夏場の売上を確保する対策としてアイスの販売を始めた。やがて、ケーキ、焼菓子などにも洋菓子の分野を広げて、今日に至っている。

アイスをはじめ乳製品の製造は管理が難しく、人間が直接かかわると衛生面で厳格な対策が必要となるため、無人化自動化が非常に進んでいる。1本100円を切るアイスバーは、コスト削減を究極まで進めて、卸売価格で売っているからこそ可能なのである。

セブン-イレブンより先日発売された、1個28円(税別)のキャンディーのような包装のアイス、デザートショコラボール3種(バニラ・イチゴ・ミント)を、シャトレーゼが製造していると評判だが、その実力の一端を垣間見ることができる。

セブン-イレブンに供給している、デザートショコラボール

セブン-イレブンに供給している、デザートショコラボール

シャトレーゼの競争優位性は、商品ラインナップの豊富さも寄与している。1つの店の中には、300~400アイテムもの商品が並んでいる。

取り扱う分野は、アイス、ケーキ、チルド(シュークリームなど生菓子)、焼菓子(フィナンシェ、クッキーなど)、和菓子、チョコレート、健康商品(スムージー、ヨーグルトなど)、冷凍食品(ピザ、パンなど)、機能性商品(糖質カット、アレルギー対応など)と、幅広い。

チルド売場(シャトレーゼ)

チルド売場(シャトレーゼ)

ケーキ売場(ヤツドキ)

ケーキ売場(ヤツドキ)

品揃えは、アイスだけでも実に100種類以上の商品が存在する。そこに、専門店としての選べる楽しさがある。店によって並ぶ商品が若干異なるが、たとえば人気が高いチョコミント味のアイスだけでも、5、6種類の製品がある。コンビニならば、スペースの関係上チョコミント味のアイスがいくら売れていても、せいぜい2種類くらいしか販売できないだろう。

シャトレーゼのアイス各種

シャトレーゼのアイス各種

「チョコバッキー」にコーティングしているチョコや、「クッキー&クランチバーバニラ」のチョコやクッキーも自家製である。大手、中堅の菓子メーカーでもこれだけの幅広い商品ラインナップを持つ会社はまれである。

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