日本の幹細胞再生医療「エビデンスが脆弱」な理由とは?

 

疫学研究を軽視する日本

私は、再生医療の否定論者ではありません。脊髄損傷や筋萎縮性側索硬化症、拡張型心筋症などの難病で苦しむ患者さんたちの症状が良くなる治療が開発されることを心から望んでいます。ノーベル賞を受けた山中伸弥先生をリーダーとして、国を挙げてこの分野のトップを走りたい気持ちも理解できます。

しかし、すべての医療行為には副作用のリスクがあります。それを検証するためには臨床試験をきちんと行わなければなりません。それをきちんとやればよいのです。もともと、臨床試験の考え方は疫学から来ていますが、伝統的に日本の医学は疫学を軽視している、と私はみています。

脚気の原因はビタミンB1不足であることを証明したのは疫学でした。しかし、森鴎外を始めとする、当時の医学会の実力者は細菌説を唱えていました。また、森永ヒ素ミルク事件の原因も当初は細菌混入が疑われていましたが、疫学研究によりミルクに混入したヒ素であることがわかりました。

エビデンスに基づく医療が日本でなかなか浸透しない理由はここにあると私は見ています。どんなに最新の技術による医療であっても、疫学をベースにした臨床試験でその評価を行わければならないのです。医学教育の基本的な科学として疫学教育を導入するべきです。
文献:David Cyranoski. The potent effects of Japan’s stem-cell policies. Nature. Sep 25, 2019.

image by: Shutterstock.com

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