「改憲」はレガシーとならないことがほぼ確定
実はこの北方領土ツァーの無理矢理は、安倍首相が3,000日を超えようかという任期の長さにも関わらす、これという歴史に残る遺産(レガシー)を何一つ残せそうにないことへの焦燥の表れである。
北方領土交渉と前後して「日朝首脳会談」というテーマがあった。安倍首相は積年、北朝鮮を拉致問題を理由に露骨に敵視し、「対話のための対話は不要で、圧倒的な(軍事的・経済的)圧力を掛け続けることで米国と100%一致している」と国会でも国連総会でも豪語し続けてきた。ところが、トランプ米大統領が北との対話に転じ「金正恩とフォール・イン・ラブ」とまで言い出すに至って、捨てられた正妻が錯乱したようになって、では今度は一体何%、米国と一致することになったのかの説明もないままに、「私が自ら金正恩委員長と向き合いたい」とか言い出す始末である。
しかしそれもまた、口先だけの「やっているフリ」で、何ら具体的な外交的な打開策を講じている訳でもないから、成果が上がることはない。そこで一転してプーチンとの“親密な”関係に頼って北方領土をクローズアップさせ、参院選前までの短期に成果を得ようとしたがこれもダメ。結局、自らの原点とも言うべき「改憲」でレガシーを達成するしかないかというのが参院選後の安倍首相の思いだったのだろう。しかし、秋の臨時国会が始まるまでの間に、すでに改憲は軌道に乗らないことが次第に明らかにとなってきた。それでますますオロオロし、「やっぱり北方領土で何か成果を出さないとまずいんじゃないか」と一層軽薄に「やっているフリ」症候群を発露したのが今回の「北方領土ツツアー」のお粗末だった――というのが脈絡である。
安倍首相流の「改憲」が無理筋であるということも、本誌はさんざん書いてきたので詳しくは避ける。
閣僚2人辞職はすでに黄信号点滅
そういう地合いの中での閣僚2人の相次ぐ辞職というのは、深刻極まりないことで、すでに政権として黄信号点滅。これでもう一人、例えば萩生田光一=文科相が後に続くことになれば、黄信号点きっぱなしになり、そこに突っ込んでいけば交通違反。安倍内閣は一気に瓦解に向かうだろう。
年末か年始に解散・総選挙を打って局面を打開するか?などと未だに期待を繋いでいるのは親安倍メディアだけで、その可能性はすでに封じられた。理由は単純で、この流れの中で無理に総選挙に打って出てもテーマは「政権の延命」という安倍首相の自己都合以外には何もないことが見え透いてしまうので、自民党は惨敗するしかないからである。それを何とか取り繕うために、安倍首相は「改憲」が争点だと言い募って勝負を賭けたいのかもしれないが、自民党の伊吹文明=元衆議院議長は24日の二階派の会合で、改憲を争点にした解散・総選挙は違憲だとの認識を示した。「改憲の発議権は国会にあり、解散権は内閣にある。(首相が)自分の権限の外にあるものを理由に自分の権限を行使するのは許されない」と。
これは、言われてみればその通りで、首相は行政の長として憲法遵守義務があるだけで、自分の考えに沿った改憲をテーマにして総選挙を打つなどもっての外。改憲を国民に問いかけることができるのは国会の3分の2を超える合意のみである。こういう原理原則に立ち返って安倍首相の盲動を抑える言葉が、自民党の大長老から発せられたということ1つで、すでに安倍首相の改憲策動は封じられたといって過言ではない。
何一つレガシーを作れないまま、これがダメならまたあちらという具合に、ただバタバタして無駄に在任期間を過ごしすだけの安倍政権は、私の直感で言えば、いくら長くても来夏の五輪後までに終わる。
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