「黙っているのが会社の存続に繋がる」という会社は存続しない

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しばしば批判の的となる、組織トップの「高給」。しかし食品衛生コンサルタントとして活躍中の河岸宏和さんは、「条件付きで」としながらも、「組織の責任者の給料はいくら高くてもいい」と断言します。河岸さんは今回、自身の無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』でその条件を記すとともに、「リーダーの責任」についても論じています。

登る山と時期を決めること リーダーの責任とは

「組織のリーダーの一番大切な仕事はなんですか」

私は講演の初めに会場の方に質問をします。一般従業員の方より高い給料を貰う方、仕事中の時間も自由に使える方の一番大切な仕事は何か皆さんはどんな答えを出しますか。

日産自動車の外国人社長の給料が桁違いに高いと報道されました。東京電力の社長の給料も高いと評判になりました。私は、組織の責任者の方の給料はいくら高くてもいいと思っています。組織のリーダーとして仕事をしっかりしてくれればいいのです。

「組織のリーダーの一番の仕事は何か」、答えは組織を継続させることだと思います。10年後ではなく、最低30年後の組織のあるべき姿を思い浮かべ思い浮かべた理想の山を組織全体に見せることがリーダーの仕事なのです。

確かに目先の利益、売り上げは食べて行くために必要な事です。しかし、目先の売上、利益はリーダーでなくても作ることができるのです。

得てして人間は自分が経験してきたことを繰り返すという楽な道を選んでしまいます。組織の将来を考えるより、自分の経験してきたことを部下と一緒に行動してしまうのです。

苦しくても、組織の将来の登るべき山の絵を描く事がリーダーの仕事だと思います。売り上げが伸びないときに、「店にお客さんが来ない」「お客さんさえ来れば売り上げが増えるのに」と考えるよりも、お客さんから「あの商品は置いていないの」と声を掛けられるような商品作りをする事、商品を作り上げるための基礎体力である研究開発に経営資源を投入すべきなのです。

定番で売れ続ける商品を作り上げ、売り上げが落ちる前に次の商品を作り上げる、目先の事では無く、会社の将来を考えて商品を開発する事に経営資源を投入することがリーダーの仕事だと思います。マスコミを使っての宣伝の前に、お客様の事を考えた商品を作るべきなのです。

基礎体力が必要

まだ登ったことが無い、高い山に登るためには、基礎体力が必要です。組織を食品工場で考えれば、工場は毎日生産活動を行い、結果として利益を稼ぎ出します。

生産活動を行うためには、品質という土台が必要です。この時の品質という言葉は、検査室、出荷判定の検査結果という狭い意味ではなく、「御社の商品の品質は高いですね」、と使う時の、会社の総合品質になります。

従業員の工場に対する忠誠心も品質に含まれます。組織に対する忠誠心と言うと、組織が行っている不正行為を知っていても、墓場まで持っていく事を忠誠心と考えてしまいますが、私は、組織の継続を考えた従業員が、組織の不正を公にすることも忠誠心と考えます。

外国産の原料を国産と表示し、出荷するという単純な産地偽装は何時まで経ってもなくなりません。原料の入っているダンボールに外国の産地が入っていれば、作業している従業員の方は気がついているはずです。仕入れを担当している方も、仕入れている原料と出荷している製品の産地が異なることに気がついているはずです。

気がついても、声を出さないこと。「屏風と商売は曲がらないと成り立たない」などと言われますが、従業員が生きてきた人生の中で身につけた倫理観から外れている行為は組織の中で声をあげるべきだと思います。

玄関に草が生えたままになっている。トイレの便器が割れている。製造現場の壁が割れている。包丁を折れたまま使用している。細菌検査を行って居ないのにデーターを作成してしまう

食品工場としてあり得ない現場であることは従業員全員が気がついているはずです。気がついても声を出さないこと、これが組織の中で生きていく大切な事の様になっていませんか。

工場の生産を支えるのが品質品質を支えるのが従業員の倫理観なのです。工場の玄関に草が生えたままの工場は、現場に入るまでもなく、現場が乱れているに間違いありません。玄関に草が生えている工場には将来は無いと思います。

あなたの工場は基礎体力を上げることを行って居ますか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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