与えすぎたカネ。なぜソフトバンクの投資先はことごとく歪むのか

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孫正義氏率いるソフトバンクグループ大赤字の要因の一つとなった、米ベンチャー企業WeWorkへの投資の失敗ですが、他の投資先にも「きな臭さ」が漂っているようです。「Windows 95を設計した日本人」として知られる中島聡さんは今回、自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、ソフトバンクが資金を提供したほとんど全ての企業で「歪み」が生じているとし、その原因を同社からの「潤沢すぎる資金」にあるとする記事を紹介しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年11月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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The SoftBank Effect: How $100 Billion Left Workers in a Hole

WeWorkの上場失敗で大きな損失を計上せざるを得なくなったソフトバンクですが、このNew York Timesの記事は、それとは少し異なる面から、ソフトバンクのビジョンファンドの問題点を鋭く指摘しています。

ソフトバンクは、WeWork以外にもUber(ライドシェアリング)、Oyo(ホテル)、Didi Chuxing(ライドシェアリング)、Ele.me(フード・デリバリ)、Manbbang(ロジスティックス)などに大量の投資を行なっていますが、それらの多くに共通するのは、Uberの様に個人事業者を束ねてサービスを提供するスタイルのギグ・エコノミーと呼ばれるビジネス・スタイルです。

この手のビジネスを立ち上げるためには、サービスの提供者と顧客の両方が必要です。これらの企業は、ソフトバンクからの豊富な資金を活用して、サービスの提供者にはインセンティブ収入保障など顧客に対しては大幅な割引を提供することにより、一気にビジネスを立ち上げる、という手法でシェアを一気に拡大しています。

しかし、そんな赤字垂れ流しの戦略はいつまでも続けられる訳がなくどこかで破綻してしまうのです。WeWorkの場合は、破綻前に上場を試みたものの、上場目論見書を丁寧に読んだ投資家たちが、そのビジネスモデルの根本的な問題点を指摘したため上場が出来なくなってしまったのです。

中小のホテルを束ねて共通の予約システムを提供するOyoも、破綻に向かってまっしぐらに進んでおり、その結果としてOyoに参加したホテルのオーナーたちが、多大な損失を被ることになっているそうです。

同じ様な歪みは、ソフトバンクが資金を提供したほとんど全ての企業で発生しており、この記事は、その原因がソフトバンクからの「潤沢すぎる資金」にあると指摘しているのです。

ベンチャー企業の成長には資金が必要ですが、本来であれば、まずは「ちゃんと利益が上がるビジネスモデル」を構築した上で、そのビジネスを大きく成長させるために資金を使うべきなのです。しかし、残念ながら、ソフトバンクの投資先の多くは、早すぎる段階で資金を潤沢に与えられてしまったため、まともなビジネスモデルを構築せずに突っ走ってしまっているのです。

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