自動車産業に起きつつある大きな変化
このメルマガでは、随分前からTeslaやGoogleが自動車産業にもたらすだろう大きな変化について指摘して来ましたが、ようやくメジャーなメディアの記者たちも気が付いたようで、この問題を取り上げ始めました。
代表的なのが、ヨーロッパで最も購読者の多いドイツの雑誌「Spiegel」に掲載された、「Will Tesla and Google Kill the German Car?」という記事です。電気自動車に関しては、ドイツの自動車会社がTeslaに何年も遅れをとっており、そこにUber/Lyftのライドシェア・サービス、Googleの自動運転技術への投資などを加えると、非常に危機的な状況になっていることを的確に伝えています。
Spiegelの記事よりも、もっと的を得ているのは、「MarketWatch」に掲載された署名記事「Opinion: Tesla’s first-mover advantage over rival car makers should only get bigger」です。自動車メーカーは、ディーラーを通して自動車を販売し、ディーラーはオイル交換などのサービスで利益を上げるというビジネスモデルそのものが時代遅れで、オンラインで購入できて、様々なサービスやアップデートもインターネット経由で受けることが出来るTeslaに通常の自動車メーカーが対抗することは難しいと指摘しています。
ちなみに、Tesla車はこれまで、カルフォルニアのFremontだけで生産されていましたが、間も無く中国の上海工場での生産が始まります。さらに、最近になって、ドイツのベルリンにも工場を作ることを発表しました(「Elon Musk: Tesla to build car and battery factory in ‘Berlin area’」)。
Fremontには既に年産44万台(うちModel 3が35万台)の生産能力があり、これに上海とベルリンの年産能力が15万台づつ(全て Model 3)と仮定すると、トータルで59万台の生産能力を持つことになります。
さらに2021年に向けて Model Yの生産能力が追加されると、Teslaは年産100万台(売り上げにすると$40 billion前後)の自動車会社に成長することになります。
しかし、世界で生産されている4輪車の数は1億台近くあるため、それでも高々1%にしか過ぎません。その頃までには、他のメーカーも電気自動車の生産台数を増やしているでしょうが、それでもトータルで2~3%にしかならないのです。
この数字を見て、「EVは市場に受け入れられたとは言えない」と感じるか「EV市場には大きな伸び代がある」と感じるかは、受け取る人次第です。私はEV市場はまだまだ伸び続けると思うし、ガソリン車・ディーゼル車に乗っている人が「まだそんな汚い自動車に乗っているの」という目で見られる日も遠くないと確信しています。
ヨーロッパの国のいくつかは、2040年以降のガソリン車・ディーゼル車の販売を禁ずる法律を通しましたが、日本も同じような法律を今のうちに作り、日本の自動車メーカーに対して大きな進化圧をかけるべきだと思います。
※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2019年11月19日号の一部抜粋です。
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