情け容赦無用。中国の内部文書リークで判明した人権弾圧の実態

 

そしてこの弾圧は、もちろん台湾にも向けられます。台湾独立を志向する民進党と蔡英文は分離独立分子であり、習近平にとってはやはり「情け容赦無用」の存在です。

香港警察が大学に突入した事態を受けて、蔡英文総統はツイッターで、1947年に台湾で起こった国民党軍による台湾人虐殺・弾圧事件「228事件」を引き合いに、中国語、英語、日本語で以下のようなメッセージを香港政府と国際社会に対して発信しました。


かつて台湾を襲った白色テロの時代には、学生が大学構内に踏み込んだ軍や警官に拘束され、 自由を奪われました。これはわれわれにとって悲痛な記憶であり、二度と繰り返してはなりません。

 

昨夜の香港では、警官隊が大学構内に突入し、デモの学生たちを鎮圧しました。闇夜に包まれたキャンパスに炎が上がり、催涙弾が飛び交いました。台湾がようやく抜け出した暗闇に、香港は足を踏み入れてしまいました。

 

警察は人々を守るため、政府は人々に奉仕するために存在します。警察が人々を守らなくなり、政府が人々のためにという考えをやめた時、必ずや人々からの信頼を失うでしょう。

 

私は沈痛な気持ちで、ここで踏みとどまるよう香港政府に呼びかけます。人々の心の声に、暴力で応えるべきではありません。北京当局の機嫌を取るために、香港の若者たちを犠牲にするべきではありません。

 

香港の自由と法治が、権威主義によってむしばまれています。権威主義の膨張に抵抗し、その最前線にいる台湾は、国際社会に呼び掛けます。自由と民主主義を信じる皆さん、共に立ち上がり、混乱する香港の情勢に関心を寄せましょう。 蔡英文

いまウイグルや香港で行われている「容赦ない弾圧」は、もし台湾が中国に併呑されたならば、いずれ台湾人にも起こることです。とくに台湾の独立派は容赦なく迫害されるでしょう。そのことは、習近平自身がすでに宣言しています。

台湾では2014年に中国との両岸サービス貿易協定の締結に反対した学生らによる反中デモ、いわゆる「ひまわり学生運動」が起こりましたが、そのような学生たちも弾圧の対象です。

また、台湾の公共放送、公共テレビ(公視)の青少年向け番組「青春発言人」が今年6~7月に台湾の高校・高専生を対象に実施した国民意識に関する調査によれば、回答者の78.7%が自分を台湾人」だと考えていると回答し、「われわれの国家」という場合に指す対象を尋ねたところ、「台湾という答えが91.3%、さらに台湾と中国の関係については、「現状維持将来的には独立に向かうが最多の40.3%を占めました。

台湾の高校・高専生、8割弱が「自分は台湾人」=公共テレビ調査

政治大選挙研究センターが7月に発表した意識調査結果では、台湾人全体では自身を台湾人だと思う人の割合は56.9%でした。「台湾人」であり「中国人」でもあると答えた人は36.5%であり、台湾人の過半数が「自分は中国人ではなく台湾人だ」という意識を持っていることがわかります。

上記のような、自分たちを「台湾人」だとする者も、中国にとっては分離独立派であり、弾圧の対象です。

中国に併呑されれば、かつての228事件のように、そして現在の香港のようになる。国際社会はそれを座視するのかというメッセージが、蔡英文のツイッターには込められているわけです。

来年1月の台湾総統選挙まで2カ月を切りました。香港とは違い、台湾は民主主義が機能しています。繰り返し述べていますが、その結果いかんによっては世界情勢は大きく変わることになるでしょう。

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