そしてこの弾圧は、もちろん台湾にも向けられます。台湾独立を志向する民進党と蔡英文は分離独立分子であり、習近平にとってはやはり「情け容赦無用」の存在です。
香港警察が大学に突入した事態を受けて、蔡英文総統はツイッターで、1947年に台湾で起こった国民党軍による台湾人虐殺・弾圧事件「228事件」を引き合いに、中国語、英語、日本語で以下のようなメッセージを香港政府と国際社会に対して発信しました。
Law enforcement exists to protect the people & government exists to serve the people. I call on the international community to take action & #StandWithHongKong against these acts of repression. Full statement: pic.twitter.com/Rdh8ggD9NV
— 蔡英文 Tsai Ing-wen (@iingwen) November 13, 2019
かつて台湾を襲った白色テロの時代には、学生が大学構内に踏み込んだ軍や警官に拘束され、 自由を奪われました。これはわれわれにとって悲痛な記憶であり、二度と繰り返してはなりません。
昨夜の香港では、警官隊が大学構内に突入し、デモの学生たちを鎮圧しました。闇夜に包まれたキャンパスに炎が上がり、催涙弾が飛び交いました。台湾がようやく抜け出した暗闇に、香港は足を踏み入れてしまいました。
警察は人々を守るため、政府は人々に奉仕するために存在します。警察が人々を守らなくなり、政府が人々のためにという考えをやめた時、必ずや人々からの信頼を失うでしょう。
私は沈痛な気持ちで、ここで踏みとどまるよう香港政府に呼びかけます。人々の心の声に、暴力で応えるべきではありません。北京当局の機嫌を取るために、香港の若者たちを犠牲にするべきではありません。
香港の自由と法治が、権威主義によってむしばまれています。権威主義の膨張に抵抗し、その最前線にいる台湾は、国際社会に呼び掛けます。自由と民主主義を信じる皆さん、共に立ち上がり、混乱する香港の情勢に関心を寄せましょう。 蔡英文
いまウイグルや香港で行われている「容赦ない弾圧」は、もし台湾が中国に併呑されたならば、いずれ台湾人にも起こることです。とくに台湾の独立派は容赦なく迫害されるでしょう。そのことは、習近平自身がすでに宣言しています。
台湾では2014年に中国との両岸サービス貿易協定の締結に反対した学生らによる反中デモ、いわゆる「ひまわり学生運動」が起こりましたが、そのような学生たちも弾圧の対象です。
また、台湾の公共放送、公共テレビ(公視)の青少年向け番組「青春発言人」が今年6~7月に台湾の高校・高専生を対象に実施した国民意識に関する調査によれば、回答者の78.7%が自分を「台湾人」だと考えていると回答し、「われわれの国家」という場合に指す対象を尋ねたところ、「台湾」という答えが91.3%、さらに台湾と中国の関係については、「現状維持、将来的には独立に向かう」が最多の40.3%を占めました。
● 台湾の高校・高専生、8割弱が「自分は台湾人」=公共テレビ調査
政治大選挙研究センターが7月に発表した意識調査結果では、台湾人全体では自身を「台湾人」だと思う人の割合は56.9%でした。「台湾人」であり「中国人」でもあると答えた人は36.5%であり、台湾人の過半数が「自分は中国人ではなく台湾人だ」という意識を持っていることがわかります。
上記のような、自分たちを「台湾人」だとする者も、中国にとっては分離独立派であり、弾圧の対象です。
中国に併呑されれば、かつての228事件のように、そして現在の香港のようになる。国際社会はそれを座視するのかというメッセージが、蔡英文のツイッターには込められているわけです。
来年1月の台湾総統選挙まで2カ月を切りました。香港とは違い、台湾は民主主義が機能しています。繰り返し述べていますが、その結果いかんによっては、世界情勢は大きく変わることになるでしょう。