情け容赦無用。中国の内部文書リークで判明した人権弾圧の実態

 

目下、米中貿易戦争以外にも、香港デモの長期化、ウイグル人の強制収用など、中国では他民族への弾圧が続いており、その反発から各地で独立を目指す動きが強まっています。華字メディアではこの機運について、かつて五胡(匈奴・鮮卑・羯・氐・羌)の反乱を「五胡乱華」と呼んだのにならって「五独乱華」などとよく報じています。

この「五独」とは、無理やり「中華民族」にさせられたチベット人ウイグル人南モンゴル人の反中国独立運動の「三独」と、無理やり「漢族」にさせられた非漢族である上海の呉人、香港の越人を意味します。

もっとも当初はこの「五独」については、上海人ではなく、独立を目指す台湾人の「台独」が含まれていましたが、「台独」は中国とは関係ないという意見も少なくないため、これを外し、たまたま上海人の独立運動グループがニューヨークで旗揚げしていたので、これを「五独」に含めたのです。

中華民族」という民族名がはじめて文字として世に出たのは、20世紀に入ってからで、革命派の機関誌である「民報」(編集長は章炳麟)や「新民叢報」(編集長は梁啓超)などで掲載されました。革命同盟会が「大漢民族」を主張していたのに対し、維新派の親玉である康有為が「清の五族共和」から「中華民族」を唱え始めたのです。

中華民国の成立後、孫文ら革命派も清の遺産相続を狙って、競うように中華民族主義者に転向しました。また、中華人民共和国は改革開放後に自力更生から外資頼りの他力本願へ180度、国策を急転換し、非漢人まで中華民族に含めるようになったのです。

戦後の台湾では、「漢族」「華人」といった新語が溢れました。中国哲学や中国文学の大家である荘万寿教授は、自分の父祖の代にはそのような「新辞」とされるボキャブラリはなかったと指摘していました。たしかに中国の正史である「二十四史」にも「漢族」という言葉は出てきません。

漢帝国の崩壊後、六朝時代に入ると、漢の遺民は五胡によってホームランドの中原を追われました。『資治通鑑』「梁紀」によれば、549年の候景の乱を発端とする漢の遺民の内ゲバによって「南京大虐殺」が発生し、漢人はほぼ絶滅し生き残った婦女子はことごとく奴隷として売られたといいます。

つまり、すでに漢人という民族はおらず、また中華民族というものも、無理やりつくられたフィクションなのです。にもかかわらず、さまざまな民族を「漢族」「中華民族」といった「牢獄」に押し込めようとしているわけです。

これに反発する「五独乱華」の顕在化は、まさしく、中国という国のかたちをめぐる大変動期がやってきたことを示しているわけです。

image by: plavevski / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年11月20日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2019年10月配信分

  • 訪中要請という罠にはまりスパイ容疑で逮捕される日本人(10/29)
  • 柳井会長の「日本人劣化」発言で、ユニクロは韓国に踏み絵を踏まされた?/ヒットゲームを通じて知る台湾史の真実(10/23)
  • 習近平がいくら恫喝しても「統一」は不可能/国際評価の高まりで注目を浴びる台湾の行方(10/15)
  • 香港・台湾を蝕む中国のフェイクニュースと「表現の不自由展」の驚くべき共通点/台湾で話題の映画・ドラマ紹介(10/08)
  • いま中国で起きている「五独乱華」(10/02)

2019年10月のバックナンバーを購入する

2019年9月配信分

  • 小泉大臣は環境問題が中国の覇権争いに利用されないよう警戒せよ/台湾独立運動のゴッドファーザーへの哀悼(9/24)
  • 台湾と断交したソロモンが陥る「債務の罠」(9/17)
  • 明治神宮に大量発生した香港批判の絵馬に見る、中国のソフトパワーのなさ/中国に翻弄される台湾・韓国芸能界の闇(9/10)
  • 対日共闘をASEANに持ちかける文在寅大統領の愚/香港と台湾の共闘を崩しにかかる中国(9/03)

2019年9月のバックナンバーを購入する

2019年8月配信分

  • 「頭おかしい」と評された盧武鉉元大統領と同じ道を行く文在寅/アジアを席巻する台湾音楽、その礎をつくった日本(8/27)
  • 日本式表現を捨てた韓国はますます支離滅となる/弾圧と情報工作の手口が世界から暴露され始めた中国(8/20)
  • 自分に不都合なことは相手のせいにして恥ない中華の特質(8/13)
  • 国民感情に反した言動は処罰すると言い出した韓国政府の狂気/対立する世界と台湾総統選挙(8/06)

2019年8月のバックナンバーを購入する

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 情け容赦無用。中国の内部文書リークで判明した人権弾圧の実態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け