政治裏面史をひもといてみても、金のニオイのするところに政治家は集まるものである。有名なタニマチが思い浮かぶ。
かつて政界と大手石油会社をつなぎ、巨額のコンサルタントフィーを稼いでいた泉井純一氏は自著で「山崎拓へ2億7,700万円、渡辺美智雄へ1億円…」など政治家への多額献金の実態を明らかにしている。
焼き鳥屋チェーンのオーナー、中岡信栄氏は、大阪から上京すると、ホテルオークラの最高級スイートルームに大金を持ち込んで宿泊。それを目当てに安倍晋太郎、竹下登ら大物政治家やエリート官僚らが続々とやってきた。北海道拓殖銀行が倒産した原因は中岡氏への巨額融資だったとさえいわれる。
むろん、安倍首相や菅官房長官、下村博文氏がコソコソとよからぬ付き合いをしていたと決めつける証拠はない。のちに「山口会長が会食し、ジャパンライフの取り組みを非常に高く評価していただきました!」と宣伝文に名を使われた加藤勝信厚労相も、彼の弁明する通り、一億総活躍担当大臣時代の勉強会と称する食事会に山口氏が参加していただけなのだろう。
だが、「60」の総理枠で山口氏が「桜を見る会」に招待されたという事実は、重く見なければならない。安倍首相の知らないうちに、永田町に名がとどろく札付きの人物を総理枠に含めたとすれば、よほど秘書たちが低脳ということになる。安倍首相の了解を得ていたと考えるほうが自然だ。
山口氏がらみで脛に傷を持つ政治家は、山口氏を無碍に扱えないに違いない。安倍首相がこの問題に関する集中審議の要求に応じようとしないために、ますます首相への疑惑が高まっている。
山口元会長は「桜を見る会」の招待状を信用の証として、2015年の春以降に、大々的に販売攻勢をかけた。それは、被害のさらなる拡大を意味した。
ようやく消費者庁が行政処分、業務停止命令に踏み切ったのは2016年12月のことだった。これ以降、2017年3月、11月、12月と、計4回の業務停止命令を受けた。
この間にも山口元会長は、ジャパンライフに権力のお墨付きがあるかのごとく見せるよう、腐心していた。2017年会社案内の役員一覧に、中嶋元特許庁長官、永谷元内閣府国民生活局長らの名が並んでいる。
稀代の詐欺師は、悪徳商法で巨万のカネを集め、被害者が増えていくのを横目に、政官界へ食い込んで、消費者庁の対応を遅らせ、ジャパンライフの延命をはかった。今年4月25日、特定商取引法違反容疑で、警察の家宅捜索を受け、破綻したが、私財を隠し持っている疑いはぬぐえない。当然、老後資金を奪われた被害者たちは全国各地で損害賠償請求訴訟を起こしている。
山口元会長への「桜を見る会」招待は、政官界とジャパンライフの腐れ縁の象徴である。私的な宴ではなく、公的行事である以上、招待した「内閣総理大臣 安倍晋三」は、ぶら下がり会見や本会議の官僚文書読み上げですませるのではなく、“一問一答形式”の予算委員会で誠実に説明責任を果たすべきである。
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