悪い意味でとてもヤバい。SNSに読解力を奪われた日本の若者たち

shutterstock_492334321
 

世界79の国と地域の高校生らを対象にした「国際学力到達調査」で、日本は特に「読解力」の項目で前回より大幅下落し、過去最低の順位を記録したことが報じられました。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、統計結果をもとに「読解力下落」の原因を探った上で、読解力のなさが実社会、企業に及ぼす悪影響を考察しています。

ものすごくヤバイ(悪い意味の)日本の高校生

経済協力開発機構(OECD)は79か国・地域の15歳計約60万人を対象に2018年に実施した「国際学力到達調査PISA)」の結果を公表した。日本は読解力が急落して過去最低の15位、前回の15年調査の8位から大きく順位を下げたとの報道。理数系は上位を維持しているが、なぜ読解力がそんな体たらくなんだ。

PISAに参加した日本の高校1年生は6,100人。「科学的応用力」の得点は2位から5位、「数学的応用力」は5位から6位に順位を下げた。その分野は、1位は中国(北京、上海、江蘇、浙江)、2位はシンガポール、3位はマカオ。日本がOECD平均を下回ってしまった読解力の順位低下の要因は子供たちの言語環境が急激に変わり、読書などで長文に触れる機会が減った」ことを文科省は挙げる。

日本の高校生はノンフィクションや新聞を読む割り合いが低かった。何を読んでいるかというと、LINEなどを使った短文のチャットで、毎日それをやっているのは日本が87.4%でOECD平均67.3%を上回る。日本の高校生が学習でのICT(情報通信技術)活用も参加国中最低水準。PISAでは何も書かない「無答」や、「問題の一部をコピペしただけの解答」が目立ったというんだから情けない。

本を読まない生徒の割合は、成績トップの中国3.3%、香港12.7%、日本は25.7%(OECD平均35.3%)。「1か月に数回以上新聞を読む」は、日本21.5%(OECD平均25.4%)、「読む生徒」は「読まない生徒」に比べ、平均点は30%以上高かった。一方で生徒のネット利用時間は増え、毎日、ほぼ毎日、チャットをする生徒は87.4%、1人用ゲームをする生徒は47.4%に上がる。

日本の生徒の正答率が低かったのは、文章から必要な情報を探し出したり、文章の信用性を吟味したりする問題だ。また、自分の考えを説明する自由記述問題も得点が振るわなかった。これ、ものすごくヤバイ(悪い意味の)んじゃないの。情報の真偽を見抜く力がなく、実社会で意見や提案を相手につたえる力がないのだ。スマホで仲間同士の短文や絵文字が中心じゃそうなるわな。

この公園には滑り台をする」という不可解な文が、読売12/5の1面トップにあった。これはある受験生から提出された要約文だという。大手予備校の現代文講師はため息をつく。「主語、術語が不明確で、意味が通じない文章は、近年特に目立つという。原因の一つはSNSの普及にある。LINEは単語や略語だけの気軽な「話し言葉」で通じる。スタンプを使えば感情の言語化もいらない。

読書などを通じて正しい日本語に触れる機会も減っているうえに、「正しく書かなくてもいい環境が生まれたことが、言葉の乱れにつながる。中高生のスマホ保有率は83.3%、10代のLINEの利用率は88.7%、読売12/5の社会面の大見出しは「ゼミ発表『そして』連発」とある。長文を嫌い接続詞は苦手なのだ。日本語を組み立てる能力は、以前の生徒、学生と比べ明らかに落ちている。

SNSが普及した今、スマホは使いこなすが、パソコンやメールを使わないという学生も多い。教員や企業関係者が感じている若者の「異変」一覧がものすごいので、長くなるが一部を紹介。ビジネス文書にがついていた。「きれい」の否定形を「きれいくない」と言う。「違った」を「違かった」と言う。

論述テストで接続詞の代わりに「→」を使う。会社のホームページの問い合わせ欄に絵文字入りで連絡してくる。「おじいさん」「おばあさん」は言えるが、「祖父」「祖母」が出て来ない。「あなたのお母様」ではなく「あなたの母」という。その理由は、母は敬語だと思ったから。これらは読売新聞の紙面から拾った。いま新聞は面白いぞ。かつてより熟読するようになった。

編集長 柴田忠男

image by: Shanti Hesse / Shutterstock.com

日刊デジタルクリエイターズこの著者の記事一覧

デジタルメディアで活躍する現役クリエイターたちのコラムで構成されている本格派。総発行部数約16000! 真のクリエイターを目指している方からデジタルに関わる方まで、すべてに向けて発行中!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】 』

【著者】 日刊デジタルクリエイターズ 【発行周期】 ほぼ日刊

print
いま読まれてます

  • 悪い意味でとてもヤバい。SNSに読解力を奪われた日本の若者たち
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け