失われた30年が強みに。日本が大停滞時代をくぐり抜けられる理由

 

米国経済の環境

日本国債と違い米国国債は、国内で消化できていない。このため、米金利が低くなると、米国債が買われなくなるので、金利を他国以上に上げて、他国資金を米国に呼び込んでいる。金利が高いのでドル買いが優勢になり、ドル高になる

ドル高になると、米国で製造する製品の価格が上がり、他国に売れないことになるので、トランプ大統領は、マイナス金利をFRBに要求してドル安政策にするという。

そうすると、欧州や日本と同じマイナス金利になり、米国債は売れなくなる。米国は、慢性的な財政赤字であり、米国債を大量に発行しているので、売れなくなると、国債金利が上昇する

金利が上昇すると、ドル高になるので、米国債をFRBが大量に買う必要になり、量的緩和を行うことになる。しかし、多くの米国債が他国にあるので、国債金利が安くなると、米国債の価格が上昇することであり、このため売りが膨らむことになる。

今年の日本のメガバンクの半期決算は、国内での貸出金利が低く赤字であるが、1.5%程度の米国債金利になり、3%金利で買った米国債が高値で売れて益出しをして黒字にしていた。このように米国債が低金利になると、今までの大量に買い込んだ米国債の高値で、日本のメガバンクは、大儲けになる。

そして、米国債を売るとドルから他通貨に代えるので、ドル売り他通貨買いになるので、ドル安になる。ドル安になるとインフレが厳しくなり、また、市場のドル札も大量に出回り、その面からもインフレになる。インフレになると、FRBは公定金利を上げる必要になる。金利を上げることが必要になる。

というように、最初の意図と違う矛盾した結果になる。米国は米国債を他国に消化させていたことで、大きな矛盾を引き起こしていることになる。

また、今の米国企業は、金利の安い他通貨で社債発行量が多く、他国の金利が低いし、ドル高であり、二重の意味で借金は容易である。しかし、米国の金利が下がるとドル安になり、かつ景気後退になると、企業業績が落ちて、格付けが下がり、金利が上がってしまう。金利が上がると、社債の償還時に借り換えの社債発行ができずに、かつ、他通貨高になり、返済ができずに企業倒産が増えていくことになる。

というように、景気後退時のインフレということで、スタグフレーションになる。

そして、法人税の税収も落ちて、より多くの米国債を発行することになる。金利とインフレに関係する多くの要素があり、それも相矛盾した関係であることで、金融統制が難しいことになっている

日本は企業の内部留保が多く、景気後退期にも十分な余裕があるので企業倒産は少ない。また、日本国債は国内消化率が高いので、国債の大量な売りを考えなくて良い。企業も余裕があるので、あまり社債を発行していない。このため、日本は金融関係要素が少なく、統制しやすい。この統制しやすいことで、次の時代の経済体制も構築しやすくなっている

大停滞時代の経済

ここからは、前回の「失われた30年から脱却。日本が再び『国営化』に舵を切るべき理由」の続きである。追われる国では投資がない。このため、国が投資するしかないという。事実、日本も欧州も中国も経済成長が減速してきた。米国だけ景気が良いように見えるが、これは2020年6月末まで行うステルスQE4のおかげで、中央銀行が資金を大量に市場に供給しているからである。この恩恵を受けて、日本株も大幅な上昇になっている。

世界の全体的な傾向は、経済成長もなく、しかし、インフレもなく、経済は水平になってきている。この原因は、新しい需要がないことによる。このため、企業間の競争は激しいが、経済成長ができなく大停滞時代になっているのだ。新しい需要を作らないとこの大停滞経済を抜け出せない。

その需要を作るには3つの方法がある。1つには、戦争で今までのインフラを大量に破壊して、需要を作る出す方法である。中東戦争や第2次朝鮮戦争などの大規模戦争を、どこかで行う可能性はある。

2つには、イノベーションや社会変革などで、今までの製品を時代遅れにしたり、目先の変わった商品で、新しい需要を作ることである。日本のインバウンドもこれであろうし、AIや自動運転も、この中であるが、省力化技術で人間の働き口がなくなる可能性もある。

3つには、アフリカ諸国を経済発展させて、新しい人たちに経済力を付けてもらい、商品を買ってもらうことで、需要を作ることである。しかし、最後のフロンティアであるアフリカの人達に労働習慣をつける国は、今話題の中国ではない。中国は中国人をアフリカに送り、労働を中国人だけで行っている。その内、アフリカ諸国での漢民族の比率が50%以上になる日が来る可能性もある。

要するに、新しい需要を作り出さないとこの大停滞時代が続くことになる。

米トランプ大統領は、製品輸入を止めて、自国を鎖国化して国内製造業を復興して、多くの人たちに経済力をつけて、需要を作る方向の経済政策を取っている。

一方、中国は、自国民に経済発展で経済力を付けて需要を作るのと、同時にアフリカ諸国の経済成長を助けて、経済力を持ってもらい、中国製品の需要を作ろうとしている。買う人も中国人かもしれないが。

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