年金不安から自分を守る。知らなきゃ損する年金の基礎知識

 

じゃあ60歳から貰えなかったのかというと、この人は貰えた。

この女性は昭和63年に日本国籍を取得していますよね。そうすると過去に外国に居たり、国民年金に国籍要件があったりして国民年金に加入できなかった91ヵ月の期間があります。こういう期間は年金額にはならないが、年金を貰うための受給資格期間25年(平成29年8月からは10年)の期間に組み込む。この91ヶ月間をカラ期間という。国の都合で加入できなかった期間だからこういう救済措置がいろいろな場合で取られている。カラ期間は年金額には反映されない期間だから、カラ(空)期間と呼ばれる所以。よって60歳時点で、278ヵ月+91ヵ月=369ヵ月となり、十分に期間を満たす。

ただ、カラ期間によって年金貰う権利を満たす人には年金請求書は送られてこないから、年金貰えないと諦める前に年金事務所で確認する事が大切。

  • 60歳から支給された老齢厚生年金→20万円×7.125(平成15年3月までの給付乗率)÷1,000×32ヵ月=45,600円(月額3,800円)

年金額少ないですね^^; 加入期間が少ないのと、給与も低かったからですね。しかし、子供のお小遣いじゃないんだからって感じですが、ビックリするほど低額の年金額というのは意外と見かけるもんです。

また、60歳から65歳までの60ヵ月は国民年金に任意で加入する事ができたので、この間に40ヶ月間だけ納めた。ついでに付加保険料も40ヵ月納めた。これにより65歳から貰える国民年金からの老齢基礎年金はいくらになるか。

  • 老齢基礎年金→780,100円÷480ヵ月(加入限度期間)×(278ヵ月+任意加入40ヵ月)=516,816円
    ・付加年金→200円×(99ヵ月+40ヵ月)=27,800円

よって、65歳からの年金総額は、

  • 老齢厚生年金45,600円+老齢基礎年金516,816円+付加年金27,800円=590,216円(月額49,184円)

なお、夫の老齢厚生年金に配偶者加給年金が付いていたら、この女性が65歳に到達した時に年額56,799円(この女性の生年月日による定額)の振替加算が付く場合がある(20年以上の厚生年金期間がある年金を貰える人は加算されない)。この加算は特に何もなければ一生もらえる。とりあえずその振替加算が付いたとします。

加給年金と振替加算額(日本年金機構)

それから、令和元年10月から消費税が10%に上がりましたが、この財源を使って低年金者の過去に年金保険料を支払った期間または免除期間に応じて月額約5,000円の給付金が始まった。前年所得+年金総額≦779,300円の人で、非課税世帯の日本に居住してる人なら貰える。

  • 年金生活者支援給付金→5,000円÷480ヵ月×318ヵ月=3,312円

年額に直すと

  • 3,312円×12ヵ月=39,744円

そうすると年金総額は

・老齢厚生年金45,600円+老齢基礎年金516,816円+振替加算56,799円+付加年金27,800円+年金生活者支援給付金39,744円=686,759円(月額57,229円)

※ 追記

記事中の付加年金は国民年金保険料と一緒に納めるものですが、第三号被保険者とか第二号被保険者(厚生年金加入者)、国民年金免除者などは付加年金の保険料を納める事はできない。あくまで国民年金保険料を自ら納める国民年金第一号被保険者がキチンと保険料を納めた場合に一緒に納められる。

image by: akiyoko / Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
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