パワハラ防止策の落とし穴。ハラスメント担当者が訴えられる?

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2019年5月にハラスメント規制法が成立し、企業にパワハラ防止策の実施が義務化されました。パワハラやセクハラ、妊娠出産をめぐるマタニティーハラスメントに関し「行ってはならない」と明記し、法律で義務付けました。その中のひとつに、ハラスメント相談窓口の設置があります。窓口を設置するということは、そこに担当者を置かなければなりませんが、どんな人が適任といえるのでしょうか。そこで今回は無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』をご紹介。著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、ハラスメント窓口の担当者が対応不足として訴えられた裁判事例を取り上げ、担当者の人選や教育について話しています。

ハラスメント相談窓口担当者の対応不足。損害賠償は認められるのか

ハラスメント相談窓口の担当者をどう決めるか。みなさんの会社はいかがでしょうか?通常ですと人事部長、もしくは、総務部長などがやられている会社が多いのではないでしょうか。また、あまり大きくない会社では社長がやられていることも多いかも知れません(社長がパワハラしたらどこに相談すれば良いのか、という問題はありますが…)。

担当者を誰にするかは、法律的な決まりはありませんのでどう決めるかは会社の自由です。ただ、いざというときにその担当者のハラスメント対応の仕方が問題になることもありますので、注意が必要です。

それについて裁判があります。

ある市の職員が上司からセクハラを受けたとして裁判を起こしました。その上司はバーベキューパーティーのときにその職員を膝にのせ、「不倫をしよう」と言ったり、別の歓迎会では「結婚しろ」「子供を産め」などの発言をしたというのです。

それと同時にもう1人、訴えられた人がいました。それは、ハラスメント相談窓口の担当課長です。その職員は担当課長の行為が「対応不足だった」と、主張したのです。

では、この裁判はどうなったか。

言うまでもないと思いますが上司の行為は当然ながらセクハラと認められました。これは特に深く考えるまでもありませんよね。では、相談窓口の担当課長の行為はどうか。裁判所は次のような点で担当課長の行為は「違法」と判断しました。

・担当課長は、セクハラがあったことを認識していたにも関わらず、その職員から事情を聞くこともせず、客観的な証拠の収集も行わなかった
・その職員が(セクハラ後に)職場で疎外感を感じていることを伝えているにもかかわらず、それをその職員の責任であるかのような発言をし、上司をかばうような発言を繰り返した
・結局、その職員へ何の対処をすることなく、また、上司に対しても懲戒等の検討をすることもなかった

結論として、これらの行為について慰謝料80万円の支払いを命じました。

いかがでしょうか。ここで、実務的には注意すべき点があります。それは「相談窓口担当者への教育」です。

みなさんの会社の担当者は万が一、ハラスメントの相談を受けた場合に、その対応は大丈夫でしょうか。人事や総務をある程度長く担当されている人であれば大丈夫だと思いますが、キャリアが浅かったり、別の部署からの異動であったりするともしかすると対応方法等の知識が不十分である可能性もあります。

もちろんその不十分を否定するわけでは決してありませんが、もしそうであれば学んでもらう必要はあります。その知識が不足していると、本人は一生懸命に対応しているつもりでも思わぬところで大きな問題になりかねません。

例えば、別の裁判例では、ハラスメント被害者から事情を聞く前に、先に加害者から話を聞いたことについて「対応が不備であった」と判断がされています。どちらから先に聞くべきかは法律で決まっているわけではありませんが、報復や証拠隠滅の恐れから通常は被害者から先に話を聞くべきでしょう。これも、この知識が無ければできないという人もいるかも知れません。

会社全体でハラスメントを行わせない仕組みづくり、雰囲気づくりをすることが大切なのはもちろんです。ただ、それと同時に担当者にはより専門的な知識が求められることを意識する必要があるのです。

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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