ニューヨークはアメリカで一番英語の上達に向かない街

 

日本人はなぜ英語が話せないのか?

英語へのコンプレックスはそれ自体、しょうがない。絶対にダメとは言えない。現実問題として、歴史が日本人をそう仕立て上げました。明治以降、日本は国民全体で欧米諸国の真似をした。追いつけ追い越せの精神がそれに拍車をかけ、終戦後、そのターゲットはアメリカに絞られました。 あんなデカイ家に住みたい。あんなファッションの着こなしをしたい。でも土地が狭く、背も低いので、そうはいかない。にも関わらず、言語だけ流暢に「アメリカン」な同胞(日本人)は許せない。そう思い込むことによって溜飲を下げたのではないでしょうか。わからなくもない。

でも、致し方ない変えようのない事実として、アメリカ人に関係なく、世界で話されている言語は「イングリッシュ」です。それは、もうどうしようもない。世界100都市に実際に足を運んで英語が通じない国は、中国と日本だけでした。 その事実は変わらない。アメリカンなモノマネをする人間を毛嫌いしても、世界語を話せるヤツを嫌いになる理由は何もない。「英語が話せる日本人」を不愉快だ!と機嫌悪くなってもいいけど、その間にも、外国人は続々日本にやってくる。東京オリンピックはこれ以上ないほど、その傾向に拍車をかける。

ただ、旅行であれ留学であれ、日本に来た外国人には「日本では日本語を話せ!」という風潮も少なからずあるとは聞きます。日本に来たのだからこっちの母国語で話せ、と。なぜなら日本人が外国に行った時には、一生懸命英語で話すぞ!と。確かに日本に来た外国人は、日本人に平気で英語で話しかけます。それに対してアメリカに旅行中の日本人が現地のアメリカ人に日本語で話しかけることは、まずありえない。なので、「日本に来た時くらい日本語で話せよ」と。

確かに一理ある。僕自身、そう思わないでもない。 でもね、世界基準の世界地図を見ると、やっぱりそれは少し無理な理屈かなと思い直したりもします。日本で見る世界地図でなく、世界でいちばん使用されているスタンダードな世界地図には当然のごとく、日本は右端にちょこっと位置されています。極東の国、と呼ばれる所以です。そんな端っこのちっちゃな島で話されている超マイナーな言語をマスターしてから来てくれ、とはさすがに言えない気持ちになります。少しだけ卑屈な言い方をすると「こんな端っこの小ちゃな島国に来てくれたのだから、日本人の方が世界で話されている言語でもてなそうよ」とすら思えてしまう。

そして、なにより、その外国人も英語が母国語じゃない場合だって当然あります。いきなり英語で話しかけてきた白人が、ハンガリー人の可能性だって、英語で道を聞いてきた黒人が、ブラジル人の可能性だってある。もちろん彼らの母国語は英語ではない。日本に来てまで堂々と母国語で通そうとしているわけじゃないんです、彼ら。申し訳ないけど日本語はわからない。なので、世界語で道を聞こう。謙虚にそう思っているはずです。

だから、聞かれた僕たちもまさか、彼らに合わせてハンガリー語で、ポルトガル語で返さなくていい。そう、世界共通の言語で返せばいい。それがいまのところイングリッシュなだけです。

もちろん日本に来た観光客のために英語をマスターしよう、と言っているわけではありません。その人の年齢、職種、住んでいるエリアにも寄るけれど、生涯英語を話さなくったってまったく支障のない人生だってあるはずです。英語を話せないとビジネスマンとしてダメ!なんて誰も断定できない。と同時に話せるからダメ!ってことも、当然ない。あたりまえだ(笑)

先日、新宿である同世代の女性とミーティングをしたときのこと。彼女は、ニューヨーク生まれの日本人女性。10代で日本に帰って、それ以降ずっと東京暮らし。まずは中学校、高校でいじめにあったと聞きます。「日本語がヘタで、コンプレックスでした」とハニかむ彼女の日本語は、いまやニューヨーク生まれと信じられないほど完璧でした。ヘタしたら僕より上手かもしれない。「だって死ぬほど勉強したもの!」と笑います。

英語大好き日本人の日常会話の中には英単語が普通に混在します。にも関わらず、その単語を現地の正しいイントネーションで発音したら、そこでまずバカにされる。イジられる。彼女にしてみれば混乱したはずです。え?英単語でしょ?英単語を使用はしたいけど、発音はそのまんまじゃダメなの?と。なので、会話に出てくる英単語を正しい発音をせずに、まずは飲み込んで、日本人の発音するカタカナ英語の発音に頭で転換し、そこから発音し直した、と言います。涙ぐましい努力。なんなんだ日本人。ここまできたら世界的ジョークだ。なぜか、僕が彼女に謝ってました(笑)そんな苦労をさせたことに。

彼女の場合は日本に住むと決めたから、死に物狂いで努力した。日本だけでしか使わないカタコト英語発音もマスターした。であれば、世界にマージして国際化社会を標榜している今、世界語をマスターしようと少しくらい努力してもいいんじゃないかなと思います。彼女の100分の1でも。

もう一度言います。職種にもよるけれど、キレイに発音する必要もないと思う。文法だって多少、間違えてもいい。苦手意識も、コンプレックスを持つのも仕方ない。英語嫌い!と公言するのもギリギリセーフ。

でも居直るのはやめよう。話せなくていい!と開き直るのはやめよう。ましてや、英語が話せる人間をゴーインな理屈で下にするのは、もう終わりだ。

英語はアメリカだけの言語じゃない。世界語、地球語だと認識し、コミュニケーションを積極的にとっていこう。カタコトからでも、文法めちゃくちゃからでもいい。世界の扉にノックしたいなら、少しでも努力しよう。話せる自分になることを往生際悪く、夢見よう。

在米20年経ってもいまだ苦手で英語コンプレックス日本代表レベルの、英語だいっキライな僕が言うのだから間違いない。やっぱり英語から逃げちゃダメなんだ

image by:Shutterstock

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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