禁煙化で止まらぬ客離れ。串カツ田中を襲う創業以来の深刻な危機

2020.01.08
 

禁煙化以降、しばらくは串カツ田中の業績は好調で、禁煙化に踏み切った18年6月こそ既存店売上高が97.1%と前年を割れたが、以降は7月101.9%、8月109.7%、9月95.3%、10月111.6%、11月99.0%、12月113.7%となって、9月がやや不振だった以外は、順調な集客だった。19年に入ってからも、1月102.8%、2月103.2%と前年同月を上回っており、3月も前年を割ったとはいえ、99.6%と微々たるものだった。まさか、ずっと売上減が続くとは思いもよらなかっただろう。

18年12月に発覚した、FC(フランチャイズ)加盟店の横浜市内4店で、監視カメラを従業員に知らせないで更衣室に設置していた、いわゆる盗撮問題が発覚したが、同社は即刻この加盟店を契約解除している。加盟店は盗難があったので、監視カメラは盗難を防止する目的と釈明したが、断固たる態度で示した。本部の直営店が起こした問題でもないし、1月、2月の集客からも、これが業績に響いたとは考えにくい。

串カツ田中は世の中の制度の変化をいち早くキャッチして、販売促進を仕掛けることに長けた会社だ。最初に大きく成功したのは17年に始まった「プレミアムフライデーキャンペーンである。経済産業省が経済団体と組み、働き方改革の一環として、毎月最終週の金曜日、午後3時に仕事を終わることを奨励。消費の喚起も狙ったものだった。しかし、「プレミアムフライデー」を実行する企業は5%にも満たないと言われ、失敗している。

ところが串カツ田中は、2月に「プレミアムフライデー」が始まるのを前倒しして、1ヶ月前の1月に「フライングフライデー」を開催。午後3時にオープンし、通常は最低でも1本120円する串カツを、100円で提供するなどした。これが各種メディアに取り上げられ、「プレミアムフライデー」に熱心な会社というイメージを、世間に植え付けることに成功した。現在も、同社は「プレミアムフライデー」企画を律儀に続けており、直近は12月20日に、午後3時にオープンし、200円以下の串カツ全品を100円で提供している。

プレミアムフライデーの取り組み

プレミアムフライデーの取り組み

串カツ田中は決して禁煙しか取り柄のないチェーンではない。嫌煙家たちのプロパガンダによって、禁煙化のみ、切り取られて語られるようになったのが、串カツ田中の悲劇である。「お店で煙草が吸えないならもう行かない」と喫煙者が離れていった代わりに、ファミリーをはじめ非喫煙者へと顧客は入れ替わっているが、新しい顧客が定着するまでは相当な時間が掛かる模様だ。

もっとも串カツ田中側は当初より、すぐに結果が出なくても、子供連れの家族を大切にすれば、串カツに親しんだ子供は大人になってもずっと食べ続けてくれると、長期の戦略に基づく旨の発言をしていた。1号店が世田谷区内の路面電車が走っているローカルな住宅街にあり、当初からファミリー客が多かったのも、禁煙化を後押しした。イデオロギーではなく、極めて現実的な差別化の施策だったのである。

串カツ田中の郊外店舗

串カツ田中の郊外店舗

しかし、長期の戦略に基づく禁煙化だと言っておきながら、目先の売上をあまりに気にし過ぎている。禁煙化以来、串カツ100円セールを連発するようになり、それも期間が長期化する傾向が続いている。これはチェーンがFC化を進めたために、短期の回収を求めるFCオーナーのニーズに応えざるを得ない事情を反映しているように見える。その結果、常時、月の3分の1~4分の1くらいが100円セールと、割引ばかりしているので、消費税引き上げのようなここぞの時の値引きキャンペーンが、効かなくなってきているのだ。

たとえば、禁煙化した18年6月では1日~14日に「感謝祭キャンペーン」と称して串カツ全品を100円で提供したのはまだしも、22日~30日にチラシ・画像を提示した人限定だが「200店舗達成記念キャンペーン」でドリンク200円に割り引いて提供している。通常は「角ハイボール」で390円である。200店舗達成記念は第2弾もあり、7月1~8日で串カツ全品が100円になった。同年9月には「禁煙化感謝祭」と銘打って3日~14日の平日は終日、土日は17時まで串カツ全品を100円で提供している。この頃は、既存店売上も好調だったので、これで良かったのだろう

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