【書評】死にたいのに。多くの日本人高齢者が幸せに死ねない理由

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延命治療の是非についてはさまざまな議論がなされていますが、欧米にはその概念すらないという事実をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、「自身の死に方と生き方を問う」という渾身の一冊。日本が「長生き地獄」と化してしまったのは、何が原因だったのでしょうか。

偏屈BOOK案内:松原惇子『長生き地獄』

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松原惇子 著/SBクリエイティブ

わたしの祖父と祖母は、自宅でなんとなく死んでいった。苦しむ様子もない自然死だった。床についている期間はわりと長かったような記憶があるが、それは日常だった。わたしには、両親が二組いた。その両親はいずれも、病院でそれぞれ数か月、眠ったきりで、苦しむこともなく亡くなった。ほとんど自然死に近い。わたしも両親のように死にたい。だが、もっと短期間で死にたい。

死を語ることは、今を充実して生きるための答え探しである、というのが著者の考え方だ。現代人は死を恐れるあまりに、死なないよう努力するが、それはまったくの逆効果である。かつて中村仁一先生の『大往生したけりゃ医療とかかわるな「自然死」のすすめ』を読んで啓発され、この欄でも書いたような記憶がある。我々は死について学ぶべきである。自分のため、家族のため。

長生きが幸せだった時代は過去のこと、現代は長生きがいろいろな問題を呼び寄せる。一日でも長く生きたいと、必死に苦しい闘病生活を送っている人もいる。それはその人の肯定する人生だから、何もいうことはない。家族ではない他人様の生き死には、著者は関係がない。だが、独身の彼女は長生きするのが怖い。それなら、長生きの現場に乗り込めばいいと思い取材に入った。

当初は「長生きがこわい」というタイトルで取材を進めていたのだが、日本には“死にたくても死なせてもらえない高齢者”が大勢いることがわかり、愕然としたという。それこそ「長生き地獄」である。なぜこうなったんだ、日本。わたし(柴田)は延命治療を拒否する。どうせ以前のような状態には戻らないんだし、苦痛を伴うのがいやだ。延命治療はエンドレスに金と時間を要する

著者はオランダの高齢者住宅を視察した。延命治療について聞きたいというと、対応してくれた人は笑いながら「延命ですか?オランダには延命という言葉さえありません」と言う。延命をしないのが当たり前。存在さえしない概念だ。これはオランダだけでなく、欧米ではスタンダードである。だから、欧米には寝たきり老人がいない。終末期の高齢者を延命させるのは非論理的だからだ。

多くの患者は寝たきりになる前に亡くなっている。自然に死ぬことができる。日本は後進国ではないし、医療は先進国である。それなのに、なぜ寝たきりの人をつくりながらも、疑問を持たなかったのか。医師は欧米の例を知っているはずなのに。答えは、医療側の算盤勘定であり、日本人の医療信仰による医師にお任せ体質も原因だ。だから、安楽死をきちんと法制化しなければならない。

著者は「良い死のために考えておきたいこと10」をあげる。延命治療をするかしないか、リビングウイルを書く、家族や友人に自分の意思を伝えておく、救急車を呼ぶか呼ばないか、孤独死を望むか望まないか、最期は自宅か施設か、あなたの地区に訪問医はいるか、生死について話せる友達がいるか、自分なりの死生観をもっているか、今を楽しんでいるか……ちょっと無理やりな感じも。

葬儀社の人の話によれば、延命治療を施されて死んだ人は、自然死の人と比べて遺体が重い。点滴や栄養補給で余分な水分が体内に溜まっているからだ。また、亡くなった直後の顔は険しく、遺族が見る前にかなり丁寧に死に化粧を施す。遺体を見ればいかに辛い最期だったか分かるという。自然に亡くなった人の顔はとても穏やかだということだ。そんな顔で死にたいものだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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