インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」塩野義製薬が誕生させた秘話

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冬になると流行するインフルエンザ。例年12~3月ごろにかけて感染が広がり、今年も多くの患者数が報告されている。そんなインフルエンザに対する薬といえば「タミフル」が有名だが、昨年から新しい治療薬「ゾフルーザ」の名をよく聞くようになった。そのゾフルーザを開発したのが塩野義製薬。「テレビ東京『カンブリア宮殿』(mine)」は、放送内容を読むだけで分かるようにテキスト化して配信。ゾフルーザ誕生秘話から、製薬メーカーとしては信じられない、塩野義製薬の驚くべき抜本改革を紹介していく。

猛威インフルエンザに1回飲むだけの新薬登場

いよいよインフルエンザのシーズン到来。ついに全国的に警報レベルに突入した。街のクリニックの待合室は、すでにインフルエンザの患者であふれている。神奈川県川崎市の廣津医院。ホテルのレストランで働いている山本知典さんは「背中が痛くて悪寒がし、普通ではないと思った。熱は今朝からで38度6分」という症状で来院した。診断してもらうとやはりインフルエンザ。山本さんには薬が処方され
た。

インフルエンザといえばよく名前を聞くのが経口薬の「タミフル」。他にも口から吸い込むタイプの「リレンザ」「イナビル」、点滴するタイプの「ラピアクタ」と、これまでは4種類の治療薬があった。しかし山本さんが処方されたのは「ゾフルーザ」。2018年3月に登場した新しい治療薬だ。

「タミフル」なら5日間飲まなければいけないが、「ゾフルーザ」は1回飲めば治療は完結。山本さんはその場で飲んだ。山本さんは仕事を休み、そのまま帰宅。2日後、再び医者の元を訪れると、「その夜は熱が39度6分まで上がりましたが、寝て起きたら36度3分になっていました」と言う。薬が苦手な子供も1回の服用で済む

「タミフル」は細胞内で増殖したインフルエンザウイルスが、細胞の外に出て広がるのを防ぐ。一方、「ゾフルーザ」は細胞の中に入り込み、ウイルスが増えるのを防ぐ

臨床試験のデータでは、「タミフル」と比べ、熱などの症状が治まるまでの時間はほぼ同じ。しかし、ウイルスが消えるまでの時間は「ゾフルーザ」の方が早い
「インフルエンザで一番重要なのは、流行を大きくしない、人にうつさない、うつらないこと。ウイルスが早くなくなるので、周囲への感染を少なくする可能性があるのが特徴だと言えると思います」(廣津医院・廣津伸夫院長)

臨床試験では、副作用は「タミフル」と同じ程度だったが、新薬なので今後も慎重に経過をみる必要があるという。

「ゾフルーザ」をつくったのが塩野義製薬。塩野義といえば長寿番組『ミュージックフェア』でおなじみだ。前回の東京オリンピックがあった1964年から一社提供で放送し続けている。代表的な薬は解熱鎮痛剤の「セデス」やビタミン剤の「ポポンS」など。しかし、こうした市販薬の売り上げは全体のわずか2%程度。ほとんどは医師から処方される薬で稼ぐメーカーだ。

その本拠地は大阪・道修町(どしょうまち)にある。ノーベル賞で脚光を浴びた「オプジーボ」の小野薬品など、道修町は大小の製薬メーカーが集まる昔からの薬の町。塩野義製薬も本社を構えている。従業員は5120人、売り上げは3447億円。これは国内10位とずば抜けた数字ではないが、製薬業界で独自のポジションを築いている。

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