インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」塩野義製薬が誕生させた秘話

 

戦い激化の製薬業界~塩野義の独自ポジションとは?

塩野義製薬社長の手代木功は、投資家たちから、その経営手腕を高く評価されている。「今の製薬会社の中で『社長として経営能力があり信用できるのは誰か』と日本の投資家に聞いたら、たぶん9割は手代木さんだと言うと思います」(シティグループ証券アナリスト・山口秀丸さん)

海外の投資家からも「手代木さんが経営にあたり10年で塩野義製薬の価値は5倍になりました。こんな経営者は世界でも滅多にいません」(米国投資会社のトレバー・ポリシュックさん)と、評判は高い。

その手代木は自ら全国の開業医を回っていた。「最前線にいる先生たちから、細かいことでも、『飲みにくい』『使いにくい』など、ヒントをいただければ……」と、医者一人一人の声に耳を傾ける。一方、手代木と接した医師たちからは、「普通、大企業の社長さんだと距離があり、なかなかお話するのも難しいですが、初めてお会いしたときから気さくな方でした」(福島県郡山市の菊池医院・菊池信太郎院長)という声が上がる。

手代木はこの10年で塩野義を特別な会社に変えた。昨年度の売り上げは国内最大手、武田薬品工業の5分の1に過ぎないが、効率よく稼ぐ力、売上高営業利益率は33%と、断トツの数字を叩き出している。

「売り上げはそんなに急に伸びるものではない。それよりも効率、売上高営業利益率で1位になったら面白くないかと、従業員に言ったんです」(手代木)

製薬業界では買収などによる生き残りの戦いが激化。武田がアイルランドの大手、シャイアーを6兆円余りで買収し、話題を呼んだばかりだ。新薬の開発には莫大な費用と時間がかかるため、「相手の成果を丸ごと買う」再編が進むのだ。しかし塩野義は違う道を行く。

手代木マジックと呼んでいて、手代木さんがやった一番大きなことは、研究開発を徹底的に変えたことです」(前出・山口さん)

手代木が目指したのは新しい薬作り、「創薬」に特化した会社。大手でも難しい新薬の開発をこの14年で7つも成し遂げた。自社開発率は、一般的な製薬会社が2~3割のところ、驚異の7割。自分で生み出すから、効率よく稼げるのだ。

「塩野義は製薬会社だと。製品を出して患者様にお届けしてお役に立つことが仕事であり、それが我々の存在している意義だということです」(手代木)

塩野義製薬_02

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