インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」塩野義製薬が誕生させた秘話

 

異例のスピードで世に出したインフルエンザ新薬

「ゾフルーザ」の開発でも手代木は手腕を発揮。異例のスピードで世に出してみせた新しい薬を作るには幾つもの工程が不可欠となる。まず決めなければ始まらないのが、薬の方向性。「ゾフルーザ」をどんな薬にするか、方向性の決定を託されたのが宍戸貴雄だった。その際、手代木に、厳しく釘を刺されたという。

タミフルと同じでは意味がないと言われました。実際に患者さんがタミフルと新しい薬を飲んでみて、違いが分からなければ意味がない、と」(宍戸)

宍戸はインフルエンザのウイルスとHIVのウイルスの弱点が似ていることに着目。自社開発していたエイズの発症を抑える抗HIV薬をヒントにすることにした。

方向性が決まり、次は有効成分の研究に。ウイルスに直接作用する薬の根幹部分だ。HIVの薬をヒントにして新薬の構造を考え出したのは河井真。試行錯誤を繰り返し、結局、最終的な有効成分を作るのに、7年の歳月を費やした

だが、実はまだ折り返し地点。ここから薬の形にし、臨床試験をクリアしなければならない。試験は短くても5年はかかるが、手代木はその半分の期間でクリアしろと命じた

「やはり開発はお金がかかります。1年縮めれば開発費もすごく浮くので、妥当なコストで患者様に届けることも可能になります」(手代木)

その無茶とも思える命令を受けたのが、製剤研究センターの相川昇平だ。有効成分が最大の効果を発揮できるよう、薬の配合を考えるのが役割だった。

臨床試験は3段階に分かれている。通常は試験ごとに結果を受けて調整するが、相川は事前に何通りもの配合を準備して結果に対応。調整にかかる時間を短くすることで、5年を3年にして見せた

かくして「ゾフルーザ」は驚きの早さで世に送り出されることになった。

「臨床試験で実際に服用したお子さんのお母さんから、『1日前まで泣き止まなかった子供が翌日ケロッとしていた』と聞いて、錠剤の開発は苦しくて長い道のりでしたが、達成できて良かったと本当にうれしかったです」(相川)

塩野義製薬_04

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