子どもの前で親が絶対に見せてはいけない「間違った謙遜」の弊害

 

謙遜も子どもの前では注意が必要

ではどんな風に言ったらいいのでしょうね?また、新米ママさんのご両親への気持ちはどう整理していったらいいのでしょう?私はこんな風にお返事しました。

 

新米ママさん、こんにちは。パピーいしがみです。メール拝見しました。

 

“「うちの子はここがまだ出来ない、離乳食は座って食べないしイライラする。あなたの子はそんなことないでしょ?」などの話を持ち掛けられると、共感しながらも「いやいやうちだって…」とついつい話してしまいます。”

 

はい、その気持ち、とってもよく分かります。でもそれは「本音と建て前」なのではなく、私たちが美徳として学んでいる「謙遜」だと思っての事なのですね。ご両親がまさに、そんな風に口にしてしまう方だったみたいです。でも私はそれは間違っていると思うのです。

 

自営業で飲食店を営んでおられた、という事なので、お客さんや地元の方々に嫌悪感を感じさせないように、謙遜の言葉(のつもりで)発しておられたのでしょうね。ですが、それを聞いていた育ったお子さんは当然、不信感を感じます。直接自分に褒めてはくれていたとしても、人前では悪口を言われている、と知ったら「どっちが本心なの?」と思いますし、裏表があって嫌な感じに受け取っていたと思います。

 

新米ママさんも「人前で自慢することはよろしくない、自分を下に下げて話すことが美とされるようなところが、あると思います。その方が相手にとっても好印象だからですよね。社交辞令とでもいうのでしょうか…」と書かれていました。

 

そうなんですね。私たちは「謙遜を美徳」とし、相手に嫌な思いをさせないように、わざと自分を下げ自慢をしない、という風潮があります。ですが、これって自分の事であれば「謙遜」ですが、自分の子どもであれば「子供を愚弄」するだけで、謙遜でも何でもないんですね。そして親が謙遜と考え、子供の至らない事を口に出し続けていると、子供はたとえ直接は褒められることがあったとしても、それに対して信用できないので自分に対して自信が持てなくなっていくのです。

 

新米ママさんが「本音と建て前」と仰っておられたり「でも色んな方と関わる上で、自分の子供のいいところばかり話せば、相手はいい気持ちはしないですよね」と書かれていたように、自分の子どもの悪口は(建て前では言うべきではないけれども)言わずにはいられない物だ、とお考えかもしれません。が、私はそうは思っていません。少なくとも私はこの「謙遜と考え子供を愚弄する」事がとても嫌いで、人前で自分の子どもを卑下することは絶対にしませんでした。別に人前で褒めちぎる必要なんてないのです。でも「子供を愚弄しない!」と決意すればできる事だと思いますよ。

 

例えば、誰かに褒められたときなどは「ありがとうございます」と感謝の言葉だけを使うようにすればいいのです。又「うちの子はここがまだ出来ない、離乳食は座って食べないしイライラする。あなたの子はそんなことないでしょ?」のように相手が子供の困った事を相談してきた時には、「あなたの子はそんなことないでしょ」に対して返事をするのではなく、「そうですよね。まだ年齢的にも難しいですよね」とか、「まだできない事も多いですよ」や「私もあまり上手に教えられなくて」のようになさればいいのです。そして子供に向かって「これから上手になるから大丈夫ね」と笑顔で話してあげても良いと思うのですね。

 

確かに「あなたの子どもと同じかそれ以上に、私の子どもも劣っているんです」「ダメな子なんです」と言えば、相手は安心します。でもそんな事を言っても良い事なんて一つもありません。結局、親が自分の対面を保つためだけに言っているに過ぎない!と私は思っています。

 

子供にも人格があります。感情もあります。「1歳で話は聞いていない分かっていない」と親は思っても、その雰囲気は感じていると私は思いますし、子供は親の言葉を聞いて育っていますから、蓄積されていくとお考えになった方が良いと思うのですね。ですから「子供への愚弄は“謙遜”ではない」「いつだってその言葉は子供が聞いている」とお考えになって、ご自分の発する言葉に気を使って欲しいのです。

 

お父さんの言葉にこうありましたね。

 

「お宅の息子さんは本当にこまめで良い方だ。いい旦那をもらったなと思ってます。それに引き換えうちの娘は本当、動かないし怠け者だから…それなのに一度怒ったら根に持ってしょうがないんですよ」

 

お父さんは、その場の雰囲気を楽しくさせることが好き、と書かれていましたね。相手を持ち上げて、逆にもう片方(自分)を下げれば、相手の気持はとても良くなります。笑いが起きるかもしれません。でも(たとえ身内であっても)誰かを傷付けてまで笑いを取るって、私はすべきではないと思います。ご自分の娘だから…と思う気持があって、比較して下げたのだと思いますが、「娘さんはあなたの所有物ではない!」とお父さんに言いたいぐらいです。

 

相手の良さを引き出して「お宅の息子さんは本当にこまめで良い方だ」と伝えれば、必ず相手も「いえいえ、お宅の御嬢さんこそ…」と言ってくださいます。その時に「ありがとうございます」とか「恐れ入ります」と言っておくだけで誰も傷つくことなく丸く収まるんですね。同じように、普段の会話で相手がへりくだってきても、それに応じなければ良いんです。

 

新米ママさんの親御さんが子供の悪口を言う状況に身を置いてしまったのは、ご商売で、できるだけ多くのお客さんに利用してもらう為だったのだと思いますよ。例えば、明石家さんまさんが、時々、大竹しのぶさんの話や、イマルちゃんの話をしますよね。鉄板のネタに場は盛り上がります。大竹しのぶさんは「うそばっかり」と笑っていますが、イマルちゃんは絶対共演NGというぐらい嫌がっています。それはそうだと思います。言われる方からしたら「なんでそんな事を言うの!?」と思いますもの。

 

でも今、新米ママさんは、ご商売をしている訳でもないでしょうし、沢山の人に好かれなければならない状況ではないですよね。でしたら褒められたら「ありがとう」を返し、本人が聞いていると思ってお返事に気を付けられたら?と思います(^^)。

 

そしてご両親には「そう言わなければならない状況だったんだな」って思ってあげる事は難しいでしょうか?きっと、お父さんもお母さんも、相手が安心してもらうために本心でない言葉を使っていたのだと思います。

 

ただ我が子であっても、人格もあり感情もある「人間」です。陰で悪口を言われていることを知ったらイヤな気持ちになります。ですから本心でなくともその場を盛り上げるための悪口は言わないでほしいし、子供が誤解してしまう可能性のある言動は慎んでほしいのです。いつか、落ち着いた時に「私はこう言われていたのが嫌だった」と伝える事として、親のよくない謙遜の癖は、ここで断ち切るようにされたらどうでしょう?

 

新米ママさんの言葉に「いくら家の中で愛情を持って接しても、私の外面によって信頼関係は崩れてしまうのではないか…」と書かれていました。その通りです。もしお父さんのように場を盛り上げる事が好きだったり、対面を保ちたい、との気持ちが強かったらお気を付け下さいね。息子さんも、新米ママさんと同じような気持ちを持って育つことが考えられますから。

 

ご自分の謙遜は結構ですが、子供への悪口は「謙遜」にはならないという事。それを意識するようになさったら子供に不信感を与えず育てられると私は思います。

日本には「愚息」とか「愚妻」などという言い方がありますよね(私は大嫌いですが)。日本人はそれを「へりくだっている」と考えて使っていたのかもしれませんが、現代はあまり聞かないとしても「自分の身内(の悪口)ならいいだろう」のように考えるところがまだあるように感じます。そしてそれが「謙遜」だと思っている人がとても多いです。ですがそれを聞いた本人は、間違いなく嫌な気持ちを抱きます。

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