東京で唯一の世界遺産、国立西洋美術館の階段に二段ベッドの追憶

国立西洋美術館
 

JR上野駅から徒歩1分、東京で唯一の世界遺産「国立西洋美術館」の建物があります。ここを訪れたのは、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さん。引地さんは、建築家ル・コルビュジエとは縁があり、都内のコミュニティカフェに「コルビュジエの階段」を展示した経験とそのときに得た教訓を披露。階段への思い入れが幼少期から続いていると打ち明けています。

国立西洋美術館の階段にコルビュジエと二段ベッドの追憶

先日、東京・上野にある国立西洋美術館を訪れ、絵画の音声ガイドとともに中世から近代までの絵画をじっくりと味わったが、そこで気になったのは館内の階段である。

この建物は建築家、ル・コルビュジエの作品で、2016年にコルビュジエの作品群の1つとして世界遺産にも登録されている建物である。外観も特徴的なコルビュジエの建築の様式に魅了されつつ、私は中の展示スペースにところどころににあった床と高い場所を結ぶ階段に心を惹かれた。

柱がなく、地点Aと地点Bを規則正しい「階段」で結んだだけのシンプルな通路は、展示スペースのアーティスティックな雰囲気を演出しており、少々「多すぎる」と感じた展示作品群とは一線を画した存在で、これもコルビュジエの不思議な魔力であろう。こんな感慨に浸るのは私自身が「コルビュジエの階段」には少々個人的な思い出があるからで、想起されたイメージも個人的な感覚ではある。

数年前にある事業家の方から海外のオークションで入手した「コルビュジエの階段」を、置く場所がないとして一時私が預かることになった。

コルビュジエの作品中、公共住宅の中で使用される木製のステップに鉄製の手すりがついた階段で、上と下を結べばそのまま使えるような設計である。東京都内でオープンしたばかりのコミュニティカフェに設置しようという話になり、そのお店の目玉として「コルビュジエの階段」を展示した。

カフェの中に階段を展示することは、私にとっては、ワクワクする体験で、多くのお客さんを待ったが、一部のマニアが来ていただいたが、階段は見向きもされなかった。カフェには行き場のない機能的ではない階段は無用だったようである。自分が「素敵」と思っていることが、見向きもされないというこの経験は、感性の押し付けは自分を切なくするという教訓となった。

こうして書いていると、私自身が階段に関心があるのだとあらためて気づく。平屋で生まれた私は階段のある家に憧れていた。小学校1年生ごろのある日、どこからかのおさがりで二段ベッドが家に持ち運ばれた時には舞い上がるような気持ちになった。

座敷に布団を敷いていた生活から天井に近いところに寝ることは人生の大転換である。4歳上の兄は下で寝て、私は上、登るには梯子がある。初めて自宅で「登れる」興奮を授かった瞬間である。用もないのに梯子を上り下りし、その日から就寝時間が楽しくなった。

しかし、その夢の日々は束の間だった。規格外に体の大きい私の兄はベッドにその体が収まらず、数日後、学校から家に戻ったらベッドは消えていた。その日、再び座敷に布団を敷いた時の悔しさは、心の中に封印をしている思い出の一つだった。

だから、私にとって階段はロマンに近い響きがある。現在の自宅の階段も特徴的で、これはまた別の機会に説明したい。

print
  • PR まだ試していない!?あなたの「可能性」を数値化するAIスコアの実態に迫る
    まだ試していない!?あなたの「可能性」を数値化するAIスコアの実態に迫る
    (株式会社J.Score)

  • 東京で唯一の世界遺産、国立西洋美術館の階段に二段ベッドの追憶
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け