紳士服の大手4社軒並み赤字。オーダースーツ不況に襲われた理由

2020.02.10
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かつては高嶺の花だったオーダースーツですが、各社の企業努力が実を結び、既製服とそう変わらない金額で手にすることが可能になりました。しかし、それがかえって紳士服業界を苦境に陥らせているようです。なぜこのような状況となっているのでしょうか。フリー・エディター&ライターでジャーナリストの長浜淳之介さんが、各社の業績や動向を分析しつつその原因を探っています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名儀)など。

オーダースーツが売れているはずなのに、なぜ紳士服業界は不振なのか

オーダースーツというヒット商品がありながら、紳士服業界の売上が悪化している。大手4社、青山商事、AOKIホールディングス、コナカ、はるやまホールディングスの直近の決算は、4社とも売上こそ微減にとどまっているが、揃って赤字と惨憺たるものだ。

近年は、堅苦しいオーダースーツのイメージを変える、予め決まったサイズ、生地、デザイン、ボタンや裏地などのディテールを組み合わせる、簡素化されたパターンオーダーが急速に普及している。ところが、競争激化で逆に“オーダースーツ不況”ともいうべき陥穽にはまっている。AOKIのようにオーダースーツの専門店から撤退する動きも出てきた。

CAD(コンピュータ支援による設計)、CAM(コンピュータ支援による製造)のようなITを使って、顧客の情報を工場にフィードバックして製造するシステムを構築。オーダースーツのコストダウンを実現したのは画期的なのだが、1着の値段が既製服と変わらない、2万円台から買えるようになった。そのため、既成服の売上に影響が出ている。しかも、通販や婦人服の業者などアウトサイダーも参入してきた。

元々、テーラーの手縫いによる仕立服であるオーダースーツは、1着数十万円になるほどの高額品であった。だが近年の技術革新により、自分のサイズにぴったりで着心地の良いオーダースーツが、パターンオーダー形式で、安価に提供可能になってきた。

近年はテーラーが減少しており、機械化せざるを得ない業界の事情もある。そこを逆手に取ってのパターンオーダーなのであるが、期待したほどの着心地を得られない。かといって、もう既製服にも戻れないといった消費者の不満も聞かれる。

手縫いのフルオーダーと、機械縫いのパターンオーダーは、例えて言えば職人が握る市井の寿司屋と、寿司ロボットが握るチェーンの回転寿司くらいの明確な違いがある。その中間のイージーオーダーは、職人が居るタイプの回転寿司のようなものか。パターンオーダーへの消費者の期待が高過ぎるのかもしれない。

スーツの市場はビジネスシーンの服装のカジュアル化、消費増税の影響もあって落ち込み、顧客の財布の紐は堅く閉じられたままである。軒並み売上不振に陥ってしまった紳士服業界に、光明はあるのだろうか。

具体的に紳士服大手各社の状況を見てみよう。最大手、青山商事の2020年3月期第2四半期決算(連結)は、売上高1,018億8,200万円(前年同期比3.1%減)、営業損失15億5,700万円、経常損失11億5,800万円の赤字。最終的な当期純損失も64億6,900万円の赤字となった。

青山商事は、16年2月にオーダースーツ専門店「ユニバーサルランゲージ・メジャーズ」1号店を渋谷にオープン。11店にまで増えている。それに加え、19年9月に都市部の「洋服の青山」、「ザ・スーツカンパニー」の計76店に、よりシステムを簡素化して、1着2万円台にまで値段を下げた「クオリティオーダー・シタテ」を投入。オーダースーツが2ブランド体制になった。

青山商事の「ザ・スーツカンパニー」

青山商事の「ザ・スーツカンパニー」

青山商事の「ザ・スーツカンパニー」

青山商事の「ザ・スーツカンパニー」

同社の特徴は、「バーチャルフィッティング アバターシステム」にある。オーダースーツは既成服のようなフィッティングがないので、着た感じがイメージできにくいが、同システムでは顧客を3D撮影して作成したアバター上に、好みの色、柄、デザインのスーツを選んで、着用後のイメージを膨らませられる。ドレスシャツと合わせると1,000種類以上のパターンが選択できる。

「ザ・スーツカンパニー」店内

「ザ・スーツカンパニー」店内

「ザ・スーツカンパニー」でもオーダースーツを扱っている

「ザ・スーツカンパニー」でもオーダースーツを扱っている

「ユニバーサルランゲージ・メジャーズ」は19年3月期には、売上が前年より50%増えるほど好調だったそうだ。新ブランドを出すほどオーダースーツが売れる流れが続いているが、全体では赤字だ。

青山商事のオーダースーツ専門店「ユニバーサル・ランゲージ・メジャーズ」

青山商事のオーダースーツ専門店「ユニバーサル・ランゲージ・メジャーズ」

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